【分類・分布】
本州中部以南に棲息。海外では東シナ海、フィリピン、インド洋、南アフリカまで広く分布。
アイゴ科の魚は二十数種おり、ヒフキアイゴ、ゴマアイゴ、マジリアイゴ、ヒメアイゴなどがいるが、本州では本種のアイゴ以外の種類を見ることは少ない。逆に、本種は沖縄諸島には分布せず、その代わりにアミアイゴやゴマアイゴ、シモフリアイゴなどが棲息している。
上が房総の堤防で釣れたアイゴ、下は沖縄で釣れたゴマアイゴ
【形態】
全長20~30㎝ほどの中型魚。体形は楕円形で、小さな口に門歯状の歯が一列に並ぶ。
体色は個体差が大きく、また刺激によってすぐに変化するのも特徴だが、主に黄灰色か暗褐色で、大小の白い斑点が散らばっている。
そしてアイゴならではの特徴といえるのが、背ビレ、尻ビレ、腹ビレの棘が鋭く、それぞれのヒレに毒線をもつこと。この棘に刺さると激しく痛み、患部は腫れ上がって、しびれや麻痺が起こる場合もあるため、釣り上げたときには十分に注意したい。
また、死んでも毒は消えないので、持ち帰って食べる場合は、あらかじめハサミなどで棘をカットし、新聞紙などに包んでから捨てたい。もしも、棘に刺さってしまった場合は、患部をお湯に浸すと毒素のタンパク質が不活性化して痛みが軽減する。
【生態】
沿岸部の岩礁帯やサンゴ礁域に多く棲息し、汽水域に入ってくることも多い。
産卵期は7~8月頃で、直径0.6㎜ほどの粘着性の卵を海藻などに産みつける。幼魚は内湾で動物性プランクトンや海藻などを捕食して育つ。
成魚になると岩礁域に移動し、岩に付着した藻類や甲殻類、多毛類なども食べる。とくに海藻を好んで捕食することから、沿岸の藻場が消失して岩肌が白っぽく露出してしまう「磯焼け」の原因として、アイゴの食害を指摘する説もある。
なお、アイゴはスズメダイの仲間と同様に、岩やサンゴに寄りかかったり、その隙間に潜り込んで眠る習性がある。
【文化・歴史】
アイゴの「アイ」というのは、アイヌ語でイラクサを意味する。イラクサは葉と茎に棘があり、アイゴも棘をもつため、この名が付いたとされる。また、アイゴの腹を割くと強いアンモニア臭がするため、ションベンウオ(九州)、バリ(西日本)、イバリ(福岡)などと呼ぶ地域もある。また、アイゴはウサギのようなやさしい顔立ちから、英語では「ラビット・フィッシュ」と呼ばれる。
1970年代までは、奄美・沖縄地方の島々では、梅雨明けの大潮の日にはシモフリアイゴやアミアイゴの幼魚が大群で押し寄せた。スク、またはシュクと呼ばれるこの小魚を浜辺ですくい、塩漬けにして保存して食べたという。これが沖縄料理では欠かせない「スクガラス」で、現在でも冷や奴にのせて食べるなど珍味として食卓に上っている。しかし、現在では海の汚染のためか、この幼魚の群来はほとんどなくなっているという。
沖縄などで売られている
アイゴの稚魚「スクガラス」の瓶詰め
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