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スルメイカ【鯣烏賊】生態編

スルメイカ【鯣烏賊】

【分類・分布】

魚介類消費王国である日本で、一世帯当たりの年間消費量で、サケマグロと並んで上位に入るのがイカ。そんな日本人にとっても、もっともなじみ深いイカが本種のスルメイカだ。
イカの仲間は、軟体動物門の頭足綱に属している。そのなかには、オウムガイの仲間、コウイカの仲間、ツツイカの仲間、コウモリダコの仲間、タコの仲間の5つの目が存在し、うち、コウイカ目とツツイカ目を合わせたものを「イカ」と呼んでいる。スルメイカが属するのは、ツツイカ目アカイカ科スルメイカ属だ。
スルメイカは、日本列島沿海を中心とした北太平洋海域に分布しており、夏場は日本海側に多いが、秋が深まるにつれ、北海道から三陸へと太平洋側に移る。

【形態】

ケンサキイカヤリイカなどと姿が似ているが、菱形のエンペラと、中央がややふくらんだ紡錘(ぼうすい)形の体形、胴の中心に暗褐色の縞が走っているのがスルメイカの特徴だ。
10本の腕のうち、2本は長い触腕となっている。触腕の大吸盤には、鋭い円錐形の歯と低い板状の歯とが交互に並んでおり、捕食するときには、この触腕を使ってエサを捕らえる。
体色は、海中にいるときには薄い褐色だが、興奮すると赤褐色に変化する。胴長は最大30㎝前後、胴幅8㎝ほどにまで成長し、寿命は約1年。メスのほうが大きく、オスは小さい。体内には透明で細長い軟甲をもっているが、これはツツイカ目に共通する特徴だ。


【生態】

日本全国に分布するスルメイカだが、大きく分けて3つの系統群があることが認められている。
1つめが、9〜11月にかけて東シナ海北部から日本海南西部までの沿岸に発生し、日本海の沖合を回遊しながら成長する秋生まれの系群。このスルメイカの系群が、日本海での主な漁獲対象群だ。
2番目は、12月〜3月にかけて東シナ海から九州北部までの沿岸に発生し、黒潮に乗って太平洋側を回遊する冬生まれの系群。
3番目は、4〜8月にかけて日本海本州沿岸から九州沿岸までと、伊豆半島周辺海域に発生する春〜夏生まれの系群。
これら3つの群れがあることで、日本周辺では同じ時期に大小さまざまな大きさのスルメイカを獲ることができている。
メスが産む卵の数は、数十万粒。卵は直径0.7~1㎜で楕円形をしており、軟らかい寒天質の卵のうに包まれている。受精してから孵化するまでの期間は、水温14~21℃で4~5日。生まれたばかりの仔は、本科特有の「リンコトウチオン」と呼ばれる幼生となる。この幼生は、成長すると2本になる触腕が分離していない棒状器官となっていて、ダルマのような奇妙な形をしている。遊泳力がないため、日本海では対馬海流、太平洋では黒潮に乗って運搬され、北上しながら育つ。北上回遊するのは索餌のためであり、主なエサは動物プランクトンや小魚。ときには、共食いもする。
スルメイカはイカ類のなかでもとくに活発に動き、性格も獰猛だ。水深80~150mの岩礁混じりの砂地を回遊しているが、時間帯によって泳層が変わる。昼間は比較的深い海の底にいるが、夜になると浅場に上がって小魚などを盛んに捕食する。棲息可能な水温は5~27℃で、とくに活性が高まるのは、水温14~18℃といわれている。


【文化・歴史】

スルメイカとは、「墨を吐き、群れる」という意味の「墨群(すみむれ)」が転訛したもの。旬である夏に獲れるスルメイカは「夏イカ」とも呼ばれ、また、魚市場では、春〜初夏にかけて獲れる小ぶりな個体を「バライカ」、初夏に関東周辺で獲れる若い小型(外套20㎝以下)を「ムギイカ」、その上のサイズを「ニセイカ」などとも呼ぶ。ほかにも、「マイカ」「ジルマイカ」「トンキュウ」「カンセキ」「サルイカ」などの地方名がある。
日本においては、古くからイカを食用としており、保存ができる乾物加工品としても歴史がある。室町時代の日明貿易やその後の南海貿易では、中国や東南アジア向けの日本の重要な輸出品目のひとつとされ、それは明治・大正時代まで続いた。
イカは古代から朝廷への貢ぎ物として奉じられてきたが、今日でも縁起の古典的な儀式の場では縁起物として扱われている。結納品にされる場合、「寿留女」という当て字を用いるが、これは、長寿を願う「寿」、「留女」は嫁ぎ先で長く留まるという意味だ。また、相撲の土俵には、縁起物としてスルメが埋められている。
スルメイカの漁は、数百年前から行われていた。小船に松明(たいまつ)を灯して漁火とし、手製の擬餌バリをふたつほど付けた「ハネゴ」や「トンボ」という簡単な漁具を使い、目の前に集まったイカを獲っていた。明治時代になると、松明が石油ランプやアセチレン灯に変わる。
さらに、終戦後の昭和28年になると大変革が起こる。擬餌バリをいくつかつないだ連結式の漁具が登場し、一度に何杯ものイカを釣り上げることができるようになったことで、漁獲量は一挙に40万トンにまで達した。昭和30年代になると、ドラム型の手動式イカ釣り機へ、そして昭和40年代には、現在の自動イカ釣り機へと進化。船も大型化され、次第に漁場が拡大していった。近年では、集魚灯もLEDライトを使った経済的なタイプが開発されつつある。

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プロフィール

生まれ故郷近くを流れる利根川・手賀沼にはじまり、国内外の海・川・湖・沼・池・・・と、ホソのマブナから南海のジャイアント・トレバリーまでを釣り歩く「さすらいの五目釣り師」。また、生来の手作り好きが高じて、20代はログビルダー、塩作りなどの職も経験。
出版社で雑誌編集に携わった後、独立。それを機に家族とともに房総の漁師町へ移住する。釣りの楽しさ、DIY・田舎暮らし&自給自足、アウトドア、料理、保存食などの世界を紹介するライターおよび編集者。詳しくはこちらへ。

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