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シイラ【鬼頭魚・鱪】生態編

シイラ【鬼頭魚・鱪】

【分類・分布】

スズキ目シイラ科シイラ属に分類される海水魚。シイラ属は、シイラとエビスシイラの2種のみが分類されている。
世界中の温帯から熱帯にかけて広く布する表層性大型肉食魚である。国内では、夏になると北海道のオホーツク海まで回遊し、北緯30度以南では周年にわたって棲息している。

【形態】

成魚は最大で体長2m、体重40㎏近くに達する。
体型は側扁し、体高があり、細長い。背ビレと尻ビレは軟条のみで大きく、とくに背ビレは長大で目の上方やや後方から始まり、尾柄基部にまで達する。オスは、成長するにつれて前頭部が異様に大きな角丸四角形になるが、メスは成長しても卵形である。
体表は微細な円鱗で覆われている。体色は、背部がやや黄を含んだ青緑色で、腹は白銀。ほぼ全身にわたって青い小斑紋があり、興奮状態になると体側の黄色が鮮烈な黄金色に輝く。スペイン語で金色を意味する「ドラド」といわれるのはこのためである。この美しい体色の輝きは、釣り上げて数分もすると急速に色褪せ、死ぬと黄褐色に変わってしまう。
近縁のエビスシイラは、よく似ているがエビスシイラは最大80cmどまりであり、雄でもシイラほど前頭部が大きくならない。また、シイラのように背が直線的でなく丸みを帯びている。
シイラ【鬼頭魚・鱪】
シイラが黄色に輝く姿を見られるのは釣り人ならではの特権。死ぬと急に色あせてしまう


【生態】

シイラは水深20m以浅を群れで遊泳し、数十〜数百尾もの群れをつくることも珍しくない。流木や流れ藻などに集まる性質があり、音を恐れず、かえって音源に集まる。春~夏に北上し、秋には南下する。
産卵期は、日本近海では6~8月。温帯から熱帯海域にかけて広い海域で産卵するが、南方海域ほど産卵期間が長い。抱卵数は、標準体長60~90㎝で20万~222万粒。1回の産卵数は8万~100万粒で、その2~3倍の卵を産出すると考えられている。卵は1.2~1.3㎜の大きさの分離浮性卵で、一粒ずつ表層を漂う。24~25℃の水温なら60時間前後で体長4~5㎜の稚魚が孵化する。
約4㎝までの仔稚魚は、海面や流れ藻の下に着く。全長3~4㎝まではカイアシ類などの動物性プランクトンを食べ、5~6㎝になるとほかの魚の仔魚を捕食するようになる。全長10㎝になると、流れ藻に着くカワハギカタクチイワシなどの稚魚を食べ、15~20㎝になると流れ藻を離れる。成魚は、カタクチイワシ、トビウオ、マイワシマアジカワハギなどの魚を捕食するが、ときに共食いをすることもある。


【文化・歴史】

シイラの名が初めて登場した古書は、寛永15(1638)年に発行された『毛吹草(けふきぐさ)』(松江重頼編)。このなかに、若狭の小松原ツノ字(シイラの地方名)、越中の九万疋(クマビキ)の名があり、九万疋のところには注として「ツノ字を云う」とある。
また、延宝4(1676)年に成立した『書言字考節用集』(若耶三胤子編)には、九万匹、または津字(つのじ)、鱪(しいら)と記されている。
英名ではDolphinfishといい、イルカ(ドルフィン)のように素早く泳ぎまわることからの命名である。ヘミングウェイの小説『老人と海』には、「ドルフィン」という言葉が登場するが、初期の日本語訳ではこれを「イルカ」と訳してしまったために、話がしっくりとこなかった。これを、お魚博士として有名な末広恭雄博士が指摘し、「イルカ」から「シイラ」に訂正翻訳されて出版されたという話がある。
シイラという和名は、体皮が堅く、薄身で肉が少ないことから、粃(しいな)(米や麦の結実しない籾(もみ)のこと)にちなんで命名されたといわれている。また、漂流物に群がる習性があり、ときにはそれが動物の死骸などであることから、「死」や「屍魚」が語源ともいわれている。
地方名は数多い。一度に大漁に獲れるという意である「万作(まんさく)」(愛媛・島根)、「万匹(まんびき)・万疋(まんびき)」(熊本・和歌山・福岡)、「十百(とおひやく)」(神奈川・高知)、「顛好(てんほう)」(浜名湖)。大漁に獲れ、大金が得られるという意である「金山(かなやま)」(長崎五島)。秋にうまいという意である「秋よし」(山口)。体表が銀色で美しいことから、質の美しい銀の異称である「南鐐(なんりよう)」(和歌山)。葬式のときに使われる細長い三角形の小旗に似ていることから「死人旗(しびとばた)」(神奈川三浦)。美しい体色をもつことから、婦人の敬称「御前」を用いた呼び名「紫摩御前(しまごぜん)」 (薩摩串本野)など。「万力(まんりき)」という別名もあり、ハリ掛かりすると万力のような力強いファイトをすることが語源といわれるが、「万匹・万疋」から派生したものという説が有力だ。
シイラは、オスが漁獲されると、ペアのメスは漁船のあとを着いて泳ぐといわれる。また、オスが釣り上げられると、その後、すぐにメスも釣れることから、夫婦仲のよい魚といわれている。このことから、高知県では、夫婦和合の象徴として、シイラの干物が結納に使われることがある。

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プロフィール

生まれ故郷近くを流れる利根川・手賀沼にはじまり、国内外の海・川・湖・沼・池・・・と、ホソのマブナから南海のジャイアント・トレバリーまでを釣り歩く「さすらいの五目釣り師」。また、生来の手作り好きが高じて、20代はログビルダー、塩作りなどの職も経験。
出版社で雑誌編集に携わった後、独立。それを機に家族とともに房総の漁師町へ移住する。釣りの楽しさ、DIY・田舎暮らし&自給自足、アウトドア、料理、保存食などの世界を紹介するライターおよび編集者。詳しくはこちらへ。

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