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マダコ【真蛸】生態編

【分類・分布】

分類は、タコ目マダコ科マダコ属。タコの仲間は、世界中で約200種類が知られており、日本近海でも50種類以上が確認されている。タコというと海中を泳ぐというよりも、這って歩いたり岩陰に潜んでいたりというイメージがあるが、マダコ科のみが海底での生活に適応した体の構造をもつにすぎない。浮遊性のものも数多く、タコの仲間は海の表層から海底まで広い範囲に適応している。
食用となり、産業的にも重要なのは、マダコ科に属するものに限られている。もっとも一般的なマダコ、体長3m・体重30㎏にもなるミズダコ、冬期に米粒状の卵が詰まりおいしい小型のイイダコ、腕がとくに長いテナガダコ、そして沖縄地方では普通に見られるワモンダコなどである。さらに、主な釣り相手となるのはマダコ、ミズダコ、イイダコの3種くらいだ。
日本では、一般に「タコ」といえばマダコを指すほど、タコ類の中心的存在。世界各地の熱帯、温帯海域に広く分布しており、日本では太平洋側の三陸付近から南、日本海側では北陸から南の砂礫や岩礁域に棲息している。

【形態】

腕を含めた体長は60㎝前後。体はしなやかで、ある程度伸縮する。背面は微小な顆粒状の点によって網目状に覆われており、背中にはダイヤモンド形に配列した大きなイボがある。体色は、赤褐色か黄褐色をしているが、腹側は淡色。皮膚には色素細胞がくまなく分布していて、興奮したときや、環境の状態によって、体色や突起の長さを数秒ほどで変えることができ、岩石や海藻に擬態する。
海の中で活発に動きまわるには、大量の酸素の供給が必要であるが、エラへの血液の出し入れを効率よくするため、エラの根元に小さなポンプを備えている。これを「エラ心臓」と呼び、器官が左右にあるので、本来の心臓と合わせて心臓が3個あることになる。
腕は8本とも外套長の2.5~3倍の長さがあり、断面は四角い。吸盤は2列で200個前後あり、オスには各腕の基部から15~19番目に大きな吸盤がある。また、オスの右第3腕は先端が変形した交接腕になっていて、外敵に襲われたときに捕らえられた腕を切り離して逃げ、その後再生される。まれに2本に分かれて再生されることがあり、8本以上の腕をもった個体が見つかることがある。

釣り上げられたマダコ。腕の表面には吸盤がズラリと並んでいる


【生態】

マダコは、引き潮で干上がってしまうような浅い所から、水深40mほどまでの砂泥地、岩礁域などに棲息している。魚と違ってあまり移動しないと思われがちだが、常磐地方沿岸では季節により北上、南下移動をする「渡りダコ・通りダコ」と呼ばれるマダコが見られる。
マダコは泳ぎがうまく、外套膜で水を押し出して前へ進む。体の柔らかさを活かして、岩のほんの小さな隙間にも潜り込んで身を隠す。また、皮膚の色素細胞と特殊な筋肉を使い、周囲の環境に合わせて瞬時に色や模様、質感までも変化させて擬態することができる。敵に見つかると、スミを吐いて目をくらませ、その間に逃げる。スミには嗅覚を鈍らせる物質が含まれており、敵はマダコを追いかけることができなくなる。
一般的に夜行性で、食性は貪欲。アサリなどの二枚貝は、吸盤で貝殻を引っ張って貝柱を引きちぎり、中の身を食べ、カニなどは8本の腕で包み込んだのち「チラミン」という毒素を分泌して弱らせてから捕食する。マダコは視覚と聴覚が優れていて、エサを獲るときには主に眼で見て、捕らえたエサを腕で触って確認し、味や触感を感じる神経が通っている吸盤で味わうといわれている。
繁殖期は春~初夏。交尾したメスは岩陰に潜み、長さ10㎝ほどの房状になった卵の塊をいくつもぶら下げるように産み付ける。この卵塊1㎝当たりに約100個の卵が含まれ、総産卵数は10万~20万個にもなるという。房状の卵は、藤の花のように見えるので「海藤花(かいとうげ)」と呼ばれ、煮物や吸い物、酢の物などに利用される。
卵は約25日で孵化するが、それまでの間、母ダコはその場を離れることなく、海水を吹きかけて新鮮な酸素を供給したり、ブラッシングによって卵の表面を掃除したりして、何も食べずに卵を守る。そして、卵の孵化が終了すると母ダコは死んでゆく。孵化したばかりの稚ダコは、体長約3.5㎜。体がほぼ透明で、胴体部分が体の大部分を占めるが、体には色素胞があり、腕には吸盤もある。卵から泳ぎ出した稚ダコは、3~4週間の浮遊期ののちに海底に着底し、海底での生活に移行する。寿命は1~2年と考えられている。

【文化・歴史】

江戸末期の『私語私臆鈔』には、「タコは多股(たこ)からきている」とある。『和名抄』には、「海蛸子(かいしようし)(海のクモ)」と表されていたものが省略されて「蛸」一字でタコと呼ぶようになったと記している。ほかに、タコは手の多いことから手許多(てここら)といわれ、これが転訛して「タコ」となったなど、どの説でも姿形からの命名である。
タコ壺漁の歴史は古く、弥生時代の遺跡からもタコ壺が出土している。明石海峡は日本でもっともマダコが獲れるところで、6割方がタコ壺漁である。松尾芭蕉は明石を訪れ、タコ壷漁を見ながら次のような句を読んでいる。「たこ壺や はかなき夢を 夏の月」
明石では6~7月に獲れたタコは大変おいしく、麦が刈られ麦ワラができる頃に水揚げされるタコをとくに「麦わらダコ」と呼んでいる。前年の秋に生まれた小さなタコは、半年を経て育ち、夏に向かって6月頃から一斉に水揚げされる。明石のタコは、明石海峡の速い潮流が太いがっしりとした脚を育み、また、タコ自身の味に影響を与えるエサが豊富なところから歯応えと甘さが身上だが、「麦わらタコ」はそれに軟らかさがプラスされる。

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プロフィール

生まれ故郷近くを流れる利根川・手賀沼にはじまり、国内外の海・川・湖・沼・池・・・と、ホソのマブナから南海のジャイアント・トレバリーまでを釣り歩く「さすらいの五目釣り師」。また、生来の手作り好きが高じて、20代はログビルダー、塩作りなどの職も経験。
出版社で雑誌編集に携わった後、独立。それを機に家族とともに房総の漁師町へ移住する。釣りの楽しさ、DIY・田舎暮らし&自給自足、アウトドア、料理、保存食などの世界を紹介するライターおよび編集者。詳しくはこちらへ。

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