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ハリセンボン【針千本】生態編

ハリセンボン【針千本】

【分類・分布】

フグ目ハリセンボン科の魚は、全世界の温帯から熱帯に広く分布しており、6属20種ほどいて、一般にはその中のハリセンボン属ハリセンボンのことを指す。広義には同属のネズミフグ、ヒトヅラハリセンボン、イシガキフグ属のイシガキフグなど、体表に多数の棘をもち、刺激するとその棘をたてる魚が含まれる。
ハリセンボンは、青森県以南の日本各地、および全世界の温帯・熱帯域に広く分布する魚で、とくに西日本~南西諸島に多く見られる。本来は暖海性の魚だが、暖流に乗って北上し、低水温に遭って死んでしまったものが本州の海岸に大量に打ち上げられることがある

【形態】

フグの仲間の特徴である丸みのある体形で、体色は淡褐色から灰褐色、腹側はやや白い。個体差があるが、黒い小さな斑点と茶褐色のまだら模様が体に散らばっている。ただし、ヒレには斑点や模様はない。小さな口の中の歯は癒合していて、上下にひとつずつある。体長は最大で40㎝程度。
泳ぐときは、ほかのフグ目の魚と同様に胸ビレ、尻ビレ、背ビレを動かしながらゆっくりと移動し、各ヒレを器用に動かして方向転換をする。ヒレには棘はなく、すべて軟条で構成されている。腹ビレはもたない。
ハリセンボンという名の通り、体表にウロコが変化したたくさんの棘をもつが、実際は1000本もなく、350~400本ほど。普段は棘を体に沿って寝かせた状態で、外敵に遭遇したり刺激を受けたりすると、水を大量に飲んだり空気を吸い込んだりして、腹を膨らませて棘を直立させ、身を守る。
なお、近縁のネズミフグは最大全長が80㎝にもなる大型種で、青森県以南、世界の温帯・熱帯域に分布する。体表とヒレに多数の小さな黒い斑点があるのが特徴。
イシガキフグは、体表だけでなく、各ヒレに小さな黒点がたくさんあるのが特徴。イシガキフグの場合、棘は非常に短く、不動性で立てることはできない。
ハリセンボン【針千本】
堤防で釣り上げられたハリセンボン。空気を吸い込んで丸くなり棘を立てている


【生態】

浅い海の岩礁、サンゴ礁、砂底に棲息する。沖縄や南日本では、漁港内や汽水域でも見られる。食性は肉食で、丈夫な歯で貝類や甲殻類、ウニなどの殻を噛み砕いて食べる。成魚になると小魚も捕食する。
産卵などのくわしい生態はよくわかっていないが、春~夏に1匹の雌を数匹の雄が追従して行われるという。フグの仲間は沈着卵であることが多いが、ハリセンボンは分離浮性卵である。産卵場所は南西諸島、台湾周辺などで、孵化後、稚魚は黒潮や対馬海流に乗って日本沿岸に達する。

【文化・歴史】

一般的には商品価値が低いが、沖縄ではハリセンボンを「アバサー」と呼び、市場などでは皮を剥がれた状態でよく売られている。叩いた肝も加えて味噌汁にした「アバサー汁」は、沖縄のポピュラーな家庭料理となっている(料理のページ参照)また、皮は各地で土産物として人気のある「フグちょうちん」の原料にもなっている。
地方名は、ハリフグ(富山県、和歌山県)、スズメフグ(福井県)、ハリオ(新潟県)、イガフグ(山口県)、バラフグ(愛媛県、高知県)など。英名はPorcupinefishといい、「ヤマアラシのような魚」という意味。
また、ハリセンボン科の学名はDiodontidaeというが、これは「ふたつの歯」という意味。ハリセンボン科の魚は上下ひとつずつ、計2つの歯をもつことからきたものだ。これに対し、フグ科の魚は上下ふたつずつの歯をもつため、Tetraodontidae=4つの歯、という学名が付いている。

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プロフィール

生まれ故郷近くを流れる利根川・手賀沼にはじまり、国内外の海・川・湖・沼・池・・・と、ホソのマブナから南海のジャイアント・トレバリーまでを釣り歩く「さすらいの五目釣り師」。また、生来の手作り好きが高じて、20代はログビルダー、塩作りなどの職も経験。
出版社で雑誌編集に携わった後、独立。それを機に家族とともに房総の漁師町へ移住する。釣りの楽しさ、DIY・田舎暮らし&自給自足、アウトドア、料理、保存食などの世界を紹介するライターおよび編集者。詳しくはこちらへ。

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