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カラフトマス【樺太鱒】生態編

【分類・分布】

サケ属にはサケ(シロザケ)、ギンザケなどが属しているが、なかでもカラフトマスは、サケと並んでもっとも海洋生活に適合された種類であるとされている。

日本での分布は、太平洋側では岩手県以北、日本海側では新潟以北とされるが、北海道のオホーツク海と根室海峡に流入する河川への遡上が全体の95%以上を占める。ほかには、日本海側では北海道北部の河川で、太平洋側では三陸沿岸北部の河川で、わずかな遡上が認められている。

世界的にはサケ属中でもっとも分布域が広く、北は北極海に面したロシアのレナ川からカナダのマッケンジー川の間、北太平洋、ベーリング海、オホーツク海全域、日本海では朝鮮半島北部まで分布している。

【形態】

全長は成魚で40~60㎝、重さ2~2.5kgほど。背部は青緑色、体側から腹にかけては銀白色で、背面、尾ビレ、脂ビレに黒い斑点があるのが特徴だ。

繁殖期には、頭部と背部が黒っぽい灰色、体側は赤紫がかった茶色となり、さらに雄は背中が突起状に大きく変形する。そのため、「セッパリ」「セッパリマス」などの別名がある。また、雄は同時に口先が尖って上顎が下方に曲がってくるのも特徴だ。その一方、雌は体色が雄と同様に変わるくらいで、体形的な変化はほとんど見られない。

カラフトマスの稚魚は、ほかのサケ属の魚の稚魚に共通して見られるパーマークがなく、背部が青緑色で体側は銀色で、ほっそりとした体形をしている。


シーズン初期のカラフトマスの雄。今後、背中が大きく変形し、口先が尖ってくる

【生態】

ほかのサケの仲間同様に、生まれた川に遡上して産卵するが、カラフトマスは母川回帰性が弱く、サケがほぼ100%の確率で母川回帰するのに対し、カラフトマスは60%程度である。違う川に遡上する個体も多いことがわかっている。

遡上時期は河川によっても異なるが、通常は7月中旬頃から始まる。産卵床はサケの産卵場所よりも流れが速い場所に作られることが多く、サケのように地下水が湧き出ている場所である必要もない。よって、サケの産卵場所とは棲み分けがされている。一ヶ所に1,000~1,500粒の卵を産み落とし、産卵後は寿命を終える。

受精からの積算水温が400~500℃になると孵化し、4~5月頃になって体長3㎝ほどの稚魚になると川底から抜け出して泳ぎ始める。浮上後はあまりエサを捕食せずに川を下り、一晩から数日で降海する。

海に入ると、オキアミやプランクトンなどを中心に活発にエサを取り始める。成長とともに沖合へ移動しながら小魚なども捕食し、北海道沿岸で生まれたものは、その年の秋までオホーツク海全体を生活の場とする。冬にかけては、北大西洋の西部水域に回遊して翌年春までを過ごし、その後、母川に向かって回帰する。その途上、急速に成長しつつ成熟し、夏には再び川に遡上する。

この2年間のサイクルから、前後の年生まれの集団同士が交じり合うことはなく、好不漁や遡上の時期などが、隔年で変動を示すことがわかっている。北海道では遡上時期が1年ごとに1ヶ月もの違いがあり、西暦の偶数年では早く、奇数年では遅い。


サケ類は生まれた川に帰る、というイメージが強いが、カラフトマスは必ずしもそうとは限らない。

【文化・歴史】

前述の通り、産卵時の背の張り具合から「セッパリ」と呼ばれるほか、三陸を中心とした岩手県地方ではサクラ、またはサクラマスと呼ばれる。これは桜の開花時に定置網などでまとまって漁獲されることに由来する呼び名で、種としてのサクラマスは別の魚だ。
そのほかにアオマス(岩手県久慈地方)、ホンマス(北海道東部)などの呼称がある。

英語名はピンクサーモンで、これは身の色に由来する。海外ではサケよりもおいしいと評価が高いが、日本ではサケに比べてやや評価が低い。これは冷蔵技術が現在ほど発達しておらず、保存が塩蔵などに限られていた頃、まだ気温が高い時期に獲れ、身に脂肪分の多いカラフトマスは長期保存が難しかったことの名残りのようだ。
冷蔵技術の進歩した現在、カラフトマスは水産資源として重要な存在で、北太平洋域での漁獲高はサケよりも多い。また、一般に「鮭缶」と呼ばれる水煮の缶詰は、多くがカラフトマスを原料としている。

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プロフィール

生まれ故郷近くを流れる利根川・手賀沼にはじまり、国内外の海・川・湖・沼・池を釣り歩く「さすらいの五目釣り師」。これまで釣った魚は350種以上。また、生来の手作り好きが高じて、20代はログビルダー、塩作りなどの職も経験。
釣りの楽しさ、DIY・田舎暮らし&自給自足、アウトドア、料理、保存食などの世界を紹介するライターおよび編集者として独立。自著執筆のほか、多くの雑誌・書籍の編集に携わる。TVCFなどのフィッシングアドバイザー、DIYアドバイザーも務める。
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