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タカベ【鰖・高部】生態編

 タカベ【鰖・高部】

【分類・分布】

タカベ属の科の帰属に関しては、さまざまな見解がある。
近年の研究では、タカベとイスズミメジナの仲間の類縁関係が示唆されており、メジナ亜科、イスズミ亜科、タカベ亜科、カゴカキダイ亜科、Parascorpidinae亜科の5亜科をまとめてイスズミ科とする研究者も多い。
魚類に関する情報を収集しているデータベース「Fish Base」やNelsonの『Fishes of the World, Fourth Edition』では、イスズミ科の単系統性はまだ確定していないとしているが、現時点ではタカベ属と南半球のBathystethusの2属をタカベ科とするのが妥当であると考えられている。
タカベは日本固有種で、棲息域は房総半島から九州にかけての太平洋側の外洋に面した岩礁地帯に限られる。

【形態】

全長は約25㎝ほどで、体型はやや細長い楕円形。体側は扁平で丸みを帯びる。アゴは小さく、下アゴは上アゴよりやや前方に突出している。
体色は、背部が青緑色がかっており、腹部が銀色。背部の側線付近に鮮やかな黄色縦帯が走っている。背ビレ、尾ビレ、尻ビレも黄色を帯びており、尾ビレの基部付近はウロコで覆われている。
本種と同じく、背と尾ビレが黄色いタカサゴ科のウメイロモドキや、フエダイ科のウメイロの幼魚と間違えやすいが、本種は背ビレに凹んだ部分があり、背の黄色帯は細く、腹側に細い暗色縦線があること、また、背ビレと尻ビレの軟条数が多いことなどから区別できる。
タカベ【鰖・高部】
ウメイロもウメイロモドキも背から尾が黄色いが、タカベは、腹側に暗色の細い縦線があることで見分けられる


【生態】

本種は岩礁地帯の中層に群生する。伊豆諸島では、大島~八丈島周辺の水深50m以浅に分布しており、利島~神津島がその中心であると考えられている。
プランクトン食性で、動物性プランクトンを盛んにあさるが、水温が16℃を下回ると摂餌が不活発となる。
産卵期は秋。卵は球形で、直径約1㎜。水温16~17℃では、受精後約60時間で孵化する。孵化した稚魚の全長は2.3㎜程度。翌年の春には、全長5㎝前後の稚魚が大群で磯の潮だまりなどに出現する。
成長は比較的遅く、1年で全長10㎝程度、2年で20㎝、30㎝以上に達するまでには7年を要すると考えられている。雌雄ともに満2歳以上で成熟するとみられている。


【文化・歴史】

和名の「タカベ」の由来は、漁村地帯で岩礁域という意味の「タカ」に、魚を表す「べ」を付けたものと考えられる。その他、静岡地方では「イボチ」、和歌山地方では「シャカ」、高知地方では「ベント」、熊本地方では「シマウオ」、鹿児島地方では「ホタ」など、多彩な地方名がある。
伊豆諸島において、タカベは古くから利用されていたようで、室町時代には貢租として現物で上納されていたという。また、江戸時代には、干物が江戸へ出荷されていたという記録もある。最盛期は夏であり、身には脂が多く含まれるため、冷凍保存設備が不十分であった戦中までは、鮮魚として島外に出荷されることは少なかったが、戦後になると一気に漁獲が盛んになった。
神津島の漁師は、数十人の集団で潜水し、網を磯まわりに張り巡らし、網の中にタカベの群れを追い込んで漁獲する。これは、「建切網(たてきりあみ)」と呼ばれ、タカベを獲る代表的な漁法のひとつである。

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プロフィール

生まれ故郷近くを流れる利根川・手賀沼にはじまり、国内外の海・川・湖・沼・池・・・と、ホソのマブナから南海のジャイアント・トレバリーまでを釣り歩く「さすらいの五目釣り師」。また、生来の手作り好きが高じて、20代はログビルダー、塩作りなどの職も経験。
出版社で雑誌編集に携わった後、独立。それを機に家族とともに房総の漁師町へ移住する。釣りの楽しさ、DIY・田舎暮らし&自給自足、アウトドア、料理、保存食などの世界を紹介するライターおよび編集者。詳しくはこちらへ。

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