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シロギス【白鱚】生態編

シロギス【白鱚】

【分類・分布】

スズキ目キス科キス属の海水魚。キスの仲間は3属30種ほどいて、すべて日本近海を含む西太平洋とインド洋に分布している。日本の沿岸に棲息するキス類には、本種のシロギスのほか、アオギス(ヤギス)、モトギス、ホシギスがいる。
シロギスは、北海道南部以南の九州までの沿岸部と朝鮮半島南部、台湾などに分布。
アオギスは、かつては東京湾などにも棲息していたが、埋め立てなどの影響で紀伊半島以東のものはほぼ絶滅したといわれ、現在では、四国の吉野川河口、豊前海、別府湾、鹿児島湾の一部と台湾にのみ棲息している。
モトギス、ホシギスは南方系のキスで、モトギスは沖縄本島以南、ホシギスは種子島以南に棲息し、沖縄にはシロギスはいない。

【形態】

紡錘形の細長い体型で、断面は円形に近い。小さく長い口を持つ。体色は淡黄白色で、腹側は白く、ヒレは透明。体側は光を反射すると虹色に光る。
体長は1年で10㎝、2年で18㎝、3年で21㎝程度に成長し、最大30㎝くらいまでに成長する。
アオギスは、シロギスよりやや細く体色が青みがかっており、第二背ビレに黒点があること、腹ビレが黄色であることなどで見分ける。シロギスより大きく全長40㎝程度まで育つ。
ホシギスは頭が大きく、死ぬと体側にいくつもの暗色の斑点が現れる。
モトギスは、ホシギスよりは細身でやや青みがかった体色をしており、背ビレには黒い斑点がある。
シロギス【白鱚】
体側の虹色の光が美しいシロギスの魚体。釣りでお目にかかるのは、15〜25cm程度のものが多い


【生態】

砂底や砂泥底のエリアを好んで棲息し、底層を小さな群れで回遊する。主に多毛類やエビ類、アミ類、端脚類、稚魚などを捕食している。
産卵期は地域によって差があるが、6~9月頃が一般的。水深15mに満たない浅場で分離浮性卵を産み、約1日で孵化する。
シロギスは、卵や稚魚が受ける危険を分散させるため、1シーズン中に数十回も卵を産む多回産卵魚である。このため、同じ年の仔魚でも、晩春に産まれたものと秋に産まれたものでは成長に大きな差がある。水温が下がる冬期は水深30m以上の深みにまで落ち、ほとんどエサを取らずに過ごす個体が多くなる。
外敵の接近などの危険を感じると、砂の中に身を隠す習性があるのもシロギスの特徴。このため底引き網で獲りにくく、釣りではおなじみの魚ながら、一般の市場には流通しにくい魚になっている。


【文化・歴史】

シロギスの投げ釣りの歴史は、釣り具の発展の歴史とオーバーラップする。リールを使用した投げ釣りは、大正時代に湘南の大磯ではじまったとされ、当時は舶来の木製のリールが使われていた。昭和20年以降になると、グラスロッド、ナイロンライン、スピニングリールが登場し、投げ釣りの爆発的な流行を迎える。
その後、さらにカーボンロッドや極細規格のPEラインが開発されたことで超遠投が可能になり、シロギスの投げ釣りが全国的に普及するとともに、各地で大会も催されるようになった。
キス釣りの歴史を江戸時代まで遡ると、東京湾における「アオギスの脚立釣り」が有名である。昔から「食味はシロギス、釣り味はアオギスが上」とされていたが、アオギスは非常に神経質な魚で、船釣りをしようにも船の影を感じただけでも逃げてしまう。そこで高さが1m以上もあるゲタを作り、干潟をゲタで歩きながら立って釣るという「ゲタ釣り」が考案された。
その後、漁師が脚立を使ってキス釣りをしたところ大漁であったことから、江戸時代後半からは脚立釣りが普及していく。以来、夏になると浅瀬に脚立が点々と並ぶ様子が、東京湾の夏の風物詩となる。
しかし、アオギスは産卵のためにきれいな砂干潟の水路が必要だったこともあり、東京湾の埋め立てや汚染により、昭和40年代にはその魚影も消え、脚立釣りの文化も途絶えてしまった。

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プロフィール

生まれ故郷近くを流れる利根川・手賀沼にはじまり、国内外の海・川・湖・沼・池・・・と、ホソのマブナから南海のジャイアント・トレバリーまでを釣り歩く「さすらいの五目釣り師」。また、生来の手作り好きが高じて、20代はログビルダー、塩作りなどの職も経験。
出版社で雑誌編集に携わった後、独立。それを機に家族とともに房総の漁師町へ移住する。釣りの楽しさ、DIY・田舎暮らし&自給自足、アウトドア、料理、保存食などの世界を紹介するライターおよび編集者。詳しくはこちらへ。

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