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キジハタ【雉羽太】生態編

キジハタ【雉羽太】

【分類・分布】

世界では、少なくとも50属400種以上の魚がハタ科に属していると考えられており、日本には11属40種近くが棲息している。ハタの仲間として、全長1m・100㎏以上に達し、ハタ類ではもっとも美味とされているクエをはじめとし、マハタ、アオハタ、アカハタカンモンハタなどが挙げられる。
本種はハタ科マハタ属に分類され、青森以南の日本各地、朝鮮半島南部から中国沿岸にかけて広く分布している。

【形態】

最大で全長60㎝近くになる個体もいるが、比較的多く見られるのは30㎝ほどのもので、ハタ類としては小~中型の種。
体はやや長く側扁し、眼は緑色、体色は紫褐色で、体全体に瞳孔大の橙黄色の斑紋が密に分布する。この斑紋は、高齢魚になると不明瞭になる。各ヒレは黄色みが強く、背ビレ第11棘下の背側に、黒っぽい大きな斑紋がひとつある。幼魚には体側に3本の黄色い縦帯があるが、成長とともに不明瞭となり、老成魚では消失する。
本種と同じマハタ属のノミノクチによく似ているが、ノミノクチは斑紋が暗赤色であることや背ビレの付け根にはっきりとした黒い斑紋があることから識別できる。
キジハタ【雉羽太】
ハタ類のなかでは最上級の美味しさもあり、関西方面では人気の対象魚だ

【生態】

沿岸の浅い岩礁域を好み、内湾の堤防やゴロタ場周辺にも棲息する。主に単独で行動し、群れはつくらない。
昼間は岩陰や磯ぎわなどに潜んでいるが、早朝や夕方には中~表層に浮上して活発にエサをあさる。多毛類、二枚貝類、節足動物などさまざまな生物を食べるが、主要なエサはカニやエビなどの甲殻類で、なかでもカニを好む傾向がある。ひんぱんにエサを捕食するのは早朝と夕方だが、日中でもエサとなるカニやエビが流れてくれば捕食する。また、大型の個体は魚食性が強まる。捕食が活発になるのは、水温15℃前後。飽食すると丸2日ほど索餌せず、冬場の低水温時には週に1回程度しか捕食しないこともあるという。
産卵期は7~8月で、水深100m以上の深海にいるオスが浅海の岩礁域にいるメスのところまでやってきて産卵を行う。水温25~27℃で受精後約24時間で孵化し、全長3㎜ほどになると浮遊生活から底棲生活へと移行する。全長5㎜程度にまで成長すると、体側に多数の朱紅色斑紋が現れ、眼も濃緑色になり、成魚とほぼ等しい姿になる。
水温25℃でもっともよく成長し、通常は孵化後3年で25㎝、4年で30㎝程度に成長する。また、ベラ科やブダイ科の魚と同じく、まずメスとして成熟し、成長するとオスに性転換して繁殖に参加する雌性先熟の性転換を行うことが知られている。性転換するのは、全長40㎝程度の個体である。

【文化・歴史】

関東ではあまりなじみがないが、西日本では高級魚として珍重され「夏のフグ」ともいわれる。店頭に並ぶことはなく、ほとんどが高級料亭などに直行し、1㎏5,000~6,000円の高値で取引される。
漁獲量はもともと少ないが、近年はとくに減少しており「幻の超高級魚」といわれるほど。そのため、各地で種苗の量産試験や放流実験が盛んに行われるようになり、同時にこれまで解明されていなかった生態が少しずつ分かってきた。
キジハタという和名は、体色がキジの羽に似ていることから付けられた。また、赤みがかった鮮やかな体色から、西日本では「赤魚(あこう)」という名で親しまれている。
ほかにも地域名は数多くある。愛称語の「ア」と、魚名語尾である「コ」を合わせた、うまい魚を表す呼称である「アコ(瀬戸内)」。カサゴ(ハチメ)の仲間に似ているが、体表が滑らかである魚という意の「ナメコバチメ(能登)」。ノミに刺されたような跡の赤色小斑紋が点在していることから「呑の口」の意で「ノミノクロ(長崎)」。「岩礁の魚」という意の「セモン(福岡)」。「夜、寝ずに活動する」という習性から「ヨネズ(若狭湾)」。藻のある岩礁に棲む魚という意味の「藻魚(もくず)(富山)」「藻(も)色(いお)(鹿児島)」など。

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プロフィール

生まれ故郷近くを流れる利根川・手賀沼にはじまり、国内外の海・川・湖・沼・池・・・と、ホソのマブナから南海のジャイアント・トレバリーまでを釣り歩く「さすらいの五目釣り師」。また、生来の手作り好きが高じて、20代はログビルダー、塩作りなどの職も経験。
出版社で雑誌編集に携わった後、独立。それを機に家族とともに房総の漁師町へ移住する。釣りの楽しさ、DIY・田舎暮らし&自給自足、アウトドア、料理、保存食などの世界を紹介するライターおよび編集者。詳しくはこちらへ。

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