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ウスメバル【薄眼張】生態編

ウスメバル【薄眼張】

【分類・分布】

本種が属するフサカサゴ科メバル属には、日本産のものだけで33種おり、標準和名に「メバル」と付けられている魚だけでも、13種を数える。姿形が似ているものも多く、混同や混称も多い。
ウスメバルは寒海性の大型メバルで、太平洋沿岸では北海道南部~駿河湾周辺、日本海沿岸においては青森県~対馬付近に分布している。メバルとともに市場に出回ることも多いが、それぞれ区別されずに「メバル」として扱われたり、春に漁獲されることから「タケノコメバル」とも呼ばれたりする。しかし、「タケノコメバル」を正式名称とする別の近縁種もある。

【形態】

ウスメバルは、メバル類のなかではもっとも大きく成長し、全長は平均して35㎝ほどだが、50㎝近くになる個体もいる。
目は大きく張り出し、体色は薄い赤橙色。体側には5個の暗色斑がある。トゴットメバルによく似るが、トゴットメバルの黒斑は6個で、輪郭が丸みを帯びているのに対し、ウスメバルの黒斑はトゴットメバルよりも薄く、また、輪郭は丸くない。第1~4斑は背ビレの下に、第5斑は尾柄にある。下アゴにウロコがあり、涙骨の下縁には鋭い2棘がある。
ウスメバル【薄眼張】

【生態】

ウスメバルは、12~1月に交尾し、メスは受精卵を体内で孵化させ、3~6月上旬に水深70~150m前後の岩礁域で産出する。このように、卵を放出するのではなく、体内で孵化する繁殖形態を「卵胎生」という。生まれた仔魚は外敵から身を守るため、数十~数千尾で群れ、およそ50日もの間、流れ藻に着いて生活する。そのため、流れ藻ごと沿岸の定置網で混獲されることもある。
体長5㎝くらいに成長すると、流れ藻を離れて沿岸の浅い海底に着底する。その後、成長に伴い深場に移動し、全長10~20㎝程度の群れは水深50~100m、全長16~24㎝以上の群れは水深100~200mに分布する。メバルは沿岸部の岩礁に棲息するが、ウスメバルは繁殖期にも接岸するなどの移動はなく、成魚の生活圏でそのまま交尾や産仔が行われると考えられる。
ウスメバルは岩場近くで十数単位の群れをつくって生活し、頭を上に、体を斜めにしてじっとしていることが多い。群れにあたるとゾロゾロと釣り上がることからも分かるように、警戒心は少なく、群れの一尾が釣り上げられても離散することはない。
未成魚は小エビを、岩礁域ではモジャコ、カニ類、イカナゴなどを摂餌し、成魚では、魚類、カニ類、エビ類、イカナゴ、頭足類などを捕食する。

【文化・歴史】

ウスメバルは成魚になっても群れる習性が残り、水深の深い海域の海底にある岩礁のまわりで生活している。この習性を利用し、新潟県では金属やコンクリートで造られた人工魚礁を海底に設置し、集まったウスメバルを効率的に漁獲する取り組みが行われている。また、稚魚の群れが外敵から身を守る隠れ場所となる「増殖場」と呼ばれる構造物も造られている。
青森県の小泊・下前地区では、1994年よりウスメバルを「津軽海峡メバル」と名付けて出荷し、ブランド化を進めている。煮付けや塩焼きに調理されることが多いウスメバルだが、津軽海峡メバルは、生食向けの食材として理想的とされる。津軽海峡の速い潮の流れによる適度な運動、および豊富なエサによって育まれた良質な肉質と、白色半透明に部分的に薄く差し込む朱色の色味が食材として高く評価されている。現在では、大部分が築地や大阪などの大都市圏に出荷されている。

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プロフィール

生まれ故郷近くを流れる利根川・手賀沼にはじまり、国内外の海・川・湖・沼・池・・・と、ホソのマブナから南海のジャイアント・トレバリーまでを釣り歩く「さすらいの五目釣り師」。また、生来の手作り好きが高じて、20代はログビルダー、塩作りなどの職も経験。
出版社で雑誌編集に携わった後、独立。それを機に家族とともに房総の漁師町へ移住する。釣りの楽しさ、DIY・田舎暮らし&自給自足、アウトドア、料理、保存食などの世界を紹介するライターおよび編集者。詳しくはこちらへ。

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