【分類・分布】
トゴットメバルは、カサゴ目フサカサゴ科メバル属に属する。
メバル属の魚は、沿岸の岩礁域から大陸斜面までさまざまな深さに棲息し、多くの種類が存在する。そのほとんどは北太平洋に分布するが、1種は南太平洋と南大西洋に分布し、4種が北大西洋に分布する。メバル、タケノコメバル、ウスメバル、キツネメバル、エゾメバル、ヨロイメバル、クロソイ、ムラソイ、アコウダイなども同じメバル属に分類されている。
本種は、太平洋側では岩手県より南、日本海側では新潟県より南に分布する。
【形態】
メバル属のなかでも小型の種で、全長は15~25㎝程度。メバルという名が付く通り、眼が大きく張り出している。体高の割には頭が尖っていて小さく、口は下アゴが張り出した受け口をしている。頭の棘は弱く、眼前骨下縁に2本の鋭い棘がある。
形状はメバルに似るが、本種は背ビレの基部から背にかけて明瞭な6条の暗色斑紋が並ぶことで容易に区別できる。また、沖釣りでは「沖メバル」として一緒に扱われるウスメバルにも酷似するが、暗色斑紋の形で見分けることができる。暗色斑紋が輪郭が角ばっているものがウスメバルで、輪郭が丸いものがトゴットメバルだ。 また、ウスメバルは本種に比べてやや寒流系で、太平洋側では房総半島より北の釣り場で釣れるのはウスメバルであることが多い。
船釣りで釣れたとゴットメバル。ほかのメバル類と見分ける点は、丸みを帯びた背中の斑点。
【生態】
メバルは沿岸の岩礁に棲息するが、本種は水深50~100mくらいの根まわりに棲息し、底付近や根の頂上付近に群れをつくっている。また、大きな個体ほど群れの上にいることが多い。
メバル属は、カサゴと同じく卵胎生。体内受精をするため、普通の魚のように卵を体外に出して子孫を増やすのではなく、交尾によって受精する。交尾したメスは、体内で受精した卵を孵化させ、ある程度の大きさになるまで育てる。そして、交尾から約1ヶ月後に、数千匹の稚魚を産む。
体内にある卵の大きさは、未受精卵で直径約0.6㎜の球形で、0.8㎜になると受精が行われる。受精後には、徐々に楕円形となり、長径2㎜、短径1.4㎜程度の大きさになると孵化する。稚魚は、母体内で全長4~4.7㎜になる頃には胸ビレができているが、卵黄物質は残存している。産出時の大きさは全長4~5㎜で、卵黄は完全に吸収されている。
産出された稚魚は、浮遊生活を送りながら動物性プランクトンを食べて成長する。5㎝程度になると底棲生活へと移り、次第に小魚や甲殻類、ゴカイ、小イカなどをエサにするようになっていく。
【文化・歴史】
地方によって呼び名が大きく違い、また、同じ名前で違う種を指すことも珍しくない。釣りの世界では「沖メバル」と呼ばれるが、これは特定の魚種のことではなく、本種に加え、同じく沖合いの深場で釣れるウスメバル、ウケクチメバル、ヤナギメバルなどの総称である。
トゴットメバルは、「戸毎眼張」「戸毎目張」「戸毎鮴」と書く。もともとは神奈川県・三崎の地方名であるが、榮川省造は、『新釈魚名考(1982年)』で、トゴットメバルのトゴットとは、外庭を意味する方言「ともと」の転訛であり、ウスメバルのウスとは、内庭を意味する方言「うす」からきており、トゴットメバルは「家の前の磯のメバル」であり、ウスメバルは「庭先にいるメバル」という意味ではないかと記している。
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