【分類・分布】
フエダイが分類されるスズキ目フエダイ科フエダイ属には、ゴマフエダイ、バラフエダイ、オキフエダイ、ウラウチフエダイ、アミメフエダイなど多くの種がいるが、なかでもナミフエダイやオキフエダイと似ている。フエダイ科には、釣魚としておなじみなものとしては、アオダイ属のウメイロ、アオチビキ属のアオチビキなどがいる。
フエダイは、フエダイ科の魚ではもっとも北に棲息する種で、本州中部以南から台湾、中国の南岸まで分布する。基本的に暖流に面した北西太平洋沿岸のみに棲息し、紀伊半島南部、高知県、九州南部などに多い。南西諸島には棲息数が少ない。
【形態】
成魚は全長40~50㎝ほどで、フエダイの仲間では中型。フエダイ属としては体高がやや広く、強く側扁する。口はやや突き出ており、口内前部に犬歯状歯が発達し、奥には円錐歯が並ぶ。
体色は赤紫褐色で、腹側は色が淡い。ヒレはすべて黄褐色。生きているときは、胴体の後半部の背側によく目立つ白い点がひとつある。背ビレと尻ビレの後端は丸みを帯びている。若魚は、頬に水色の縦線が1~3本あり、成長するにつれ、目立たなくなってくる。
本種は、1983年にナミフエダイから新種として分けられたもので、両者はよく似ている。見分け方としては、ナミフエダイは水色の線が頬だけでなく頭部全体に多数見られ、体側の白点はなく、体側全体に小さな白点が散らばっている。また、尻ビレの後端が尖っていて、ヒレの付け根は体色と同じ色のグラデーションになっている。分布域も南日本だけでなく、オーストラリア北岸やアフリカの東岸、インド太平洋の熱帯域など広域にわたる。
フエダイの一番見分けやすいポイントは、体側の白い点。ナミフエダイなどよく似た近縁種も多い。
【生態】
沿岸域の岩礁、砂礫底、サンゴ礁などに棲息。主に海底近くを遊泳し、小魚、甲殻類、頭足類などを捕食する。
産卵期は5~7月頃の初夏で、地域によっては晩夏まで続く。産卵期を迎えたフエダイは、数百匹単位の大群になって浅場にやってきて、夜間に産卵を行う。卵は直径0.8㎜程度の分離浮生卵で、水温24℃の環境下では約30時間で孵化する。
【文化・歴史】
フエダイという名は、ゴマフエダイ同様、口が前方に出ていて口笛を吹いているようであるところに由来する。漢字でも「笛鯛」と書く。
地方名は、タルミ(南紀)、イセギ(四国)、ホシタルミ・アカシビ(鹿児島)、シブダイ(宮崎)、ショウブ(種子島)、イナクー、イナフクー(沖縄)、アブラダイなど。
英名のStar snapperおよび、学名内の種を表すstellatus(=星の、星型のという意味)は、いずれも体側にある白点を星とみなして付けられた名前である。鹿児島の地方名であるホシタルミも、ホシは星のこと、タルミはフエダイ類全般の地方名であり、やはり体側の白点に由来する名である。
↓こちらもあわせてどうぞ