【分類・分布】
スズキ目タイ科に属する本当の意味でのマダイの仲間は、チダイ属チダイをはじめ、キダイ属キダイやクロダイ属クロダイ・キチヌ、ヘダイ属ヘダイなど数十種に限られる。アマダイ、キンメダイ、イシダイ、イトヨリダイをはじめ、「〜ダイ」という魚は200種以上いるが、赤っぽい体色、体型がタイに似ているといった理由で名付けられたなどの「あやかり鯛」で、これらは分類上はタイに近いものではない。
チダイは、関東では「ハナダイ」という名で親しまれており、釣り人に通りがいいのもこちらの呼び名。産卵期にオデコが出たものを「デコ」と呼ぶこともある。
チダイは、琉球諸島を除く北海道南部以南の日本各地に分布している。
【形態】
体高は広く楕円形で、強く側扁する。体色は赤く、腹部は淡紅色。体側上半部に、コバルト色の小さな斑点が不規則に数列散在する。姿形はマダイとよく似ているが、チダイは女性的な姿をしており、成魚になってもせいぜい体長45㎝、1㎏程度で、800gもあれば老成魚といえる。一方、マダイの姿は男性的であり、全長1m以上にも成長し、10㎏を超す大魚となる。
マダイとチダイの簡単な見分け方として、尾ビレとエラブタの縁の色、そして、背ビレの長さが挙げられる。マダイは、尾ビレの縁が黒くなっているが、チダイは薄い赤色の一色だけ。また、チダイは、背ビレの一部が長く、エラブタの縁が濃赤色となっている。以上のことに注目して比較すれば、容易に区別することができる。そのほか、同じサイズのチダイとマダイを比べると、チダイのほうが体高がやや高く、目の玉における黒い部分も大きい。
マダイとよく似ているが、エラブタの縁が鮮やかな赤色なところが、一番の特徴だ
【生態】
チダイは、甲殻類、多毛類、軟体動物などを好んで食べる肉食性の魚である。
群れをつくる習性があり、海底付近にかなりの数でまとまって生活している。沈み根、漁礁などのマダイの着く優良ポイントには、500gを超すチダイが数百、数千もの大群をなして来流する。これらのチダイは産卵群であるが、大集合は産卵期だけに限らず、冬季や初夏の麦秋頃にも必ず見られることから、群泳性があると考えられる。
地域差はあるが、産卵期は主に9〜11月。卵は油球1個をもつ分離浮遊卵で、卵径は0.9~1.1㎜。水温20℃では2日前後で孵化し、孵化した稚魚は内湾で過ごし、1年で13㎝前後にまで成長する
【文化・歴史】
チダイの名は、エラブタの縁にある血の滲んだような濃赤色の帯を由来とする説、「小さいタイ」の意とする説などがある。また、オスのチダイは、大型になるとオデコが目立って隆起する。その出っ張ったオデコが鼻のように見えること、あるいは花のように美しく鮮やかな体色をしていることから、ハナダイとも呼ばれるようになったといわれている。さらに漁師の間では、隆起したオデコが、鼻面が曲がったような顔に見えることから、「ハナオレ」とか「ハナオレダイ」などと呼ばれている。
チダイはマダイほどは大きくならないが、その姿形と色合いの美しさはマダイを凌ぐものがあり、祝宴などにはマダイの代わりに饗されることがある。地方名は多く、レンコダイ、チコダイ、ヒメダイ、アカダイ、アブラッコ、オオッパナなどと呼ばれている。なお、キダイも群れで生活し、一度に獲れることからレンコダイと呼ばれることが多い。
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