【分類・分布】
トウゴロウイワシ目トウゴロウイワシ科ギンイソイワシ属に分類される海水魚。トウゴロウイワシ目は、6科48属約300種が分類されるグループだが、その大半がオーストラリア、ニューギニアを中心とした淡水魚であり、100種ほどが沿岸の浅海に棲息する海水魚。ただし、分類については異論も多く、今後、分類体系が変化する可能性もある。
トウゴロウイワシ目の淡水魚で日本に棲息する在来種はいないが、日本でも一部の河川や湖に移入されているペヘレイなどが知られている。トウゴロウイワシ科は12属60種からなり、ほとんどが小型の海水魚で、日本近海にはトウゴロウイワシ、ギンイソイワシ、ヤクシマイワシ、オキナワトウゴロウなど数種が棲息している。イワシの名がついてはいるが、カタクチイワシはニシン目カタクチイワシ科、ウルメイワシやマイワシはニシン目ニシン科など、分類上は近いわけではなく、むしろダツやボラに近い仲間だ。
本種の分布エリアは、沖縄諸島を除く千葉県以南の日本各地、インド・西太平洋など。
【形態】
カタクチイワシに似た細長い体形で、体色は背側は緑色がかった青銀色、腹側は銀白色。目玉は大きく、体側の中央に太くて目立つ銀色の縦線が1本走っている。
イワシ類との相違点は、イワシ類は背ビレが1基なのに対し、トウゴロウイワシは背ビレが離れた位置に2基あること。また、イワシ類は胸ビレが腹寄りに付いているのに対して背側にあること、イワシ類のウロコは非常に剥げやすいのに対して非常に硬いことなどが挙げられる。
全長は成魚で10㎝程度のものが多く、最大でも15㎝程度である。
同じ仲間のギンイソイワシに見た目がそっくりだが、腹ビレの長さの中間に肛門があるのが本種で、腹ビレ先端より後ろに肛門があるのがギンイソイワシとなる。
カタクチイワシに似ているが、鱗が非常に硬いことや顔の違いなどで見分けられる
【生態】
磯や堤防まわり、河口部の汽水域などに棲息し、海面近くを大群で回遊する。主食は、動物性プランクトン。
産卵期は6~8月頃で、卵は纏絡(てんらく)性沈性卵。纏絡卵とは、卵そのものには接着性がないが卵に糸が付いていて、この糸が物体にくっつく性質をもつ卵のこと。1週間〜10日ほどで孵化し、秋頃には全長3~5㎝程度に成長。翌春には成熟して産卵する。寿命は2年ほど。
近縁種のギンイソイワシは、本種と分布域が重なるが、より外洋に面した潮通しのよい場所を回遊している。
【文化・歴史】
九州の玄海地方の方言で、着物を脱がずそのまま寝てしまうことを「とんころ」または「とんごろ」という。トウゴロウイワシはウロコが剥げにくいことから、着物を脱がない様子に見立てられ、「とんころ」が「とうごろう」に転じたとされる。
そのほかの地方名としては、ウロコイワシ(有明海沿岸)、ネコイワシ(愛知)、イソイワシ(神奈川)、ボライワシ(神奈川)、ヤマハダラ(福岡県)など。
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