【分類・分布】
スズキ目タカノハダイ科タカノハダイ属に分類される海水魚。タカノハダイ科は5属22種を含み、温帯から亜熱帯にかけての浅い海に多く棲息する。北半球に分布する種類は、すべてタカノハダイ属に分類される。日本近海には本種のほかに、近縁種であるミギマキ(G.zebra)、ユウダチタカノハ(G.quadricornis)の2種がいる。
タイと名は付くが、マダイやクロダイなどと分類的に近いわけではない。
房総半島以南の各地の沿岸部、東シナ海、黄海にかけて分布する。
【形態】
体形はタイの仲間のように側扁して、背も立派に張っているが、ややいびつで、目の後ろから背が盛り上がるのが特徴。頭はやや小さく、唇は厚いが口も小さい。胸ビレの下部の軟条は、長く太いのが特徴。この胸ビレは、海底で静止するときにバランスをとるのに適した形状になっているとされる。
体色は淡青褐色から淡黄褐色で、体側に茶褐色の縞模様が9本斜めに走っている。この斜めの縞(斜帯、あるいは斜走帯という)をもつ魚は少ないが、タカノハダイは完璧な斜帯を持つことで知られる。エラブタの後端は濃茶褐色で、ヒレは黄褐色。尾ビレには淡青色の斑点がある。最大で全長45㎝ほどにまで成長する。
ミギマキは地色の黄色みが強く、口の周囲が赤い。尾に白い斑点はなく、尾の上半分は黄色、下半分は体側の縞模様と同様の茶褐色となっている。目を通る縞模様は、タカノハダイはエラブタの下端へ伸びているが、ミギマキは胸ビレの基部に達している。また、ミギマキのほうが本種よりやや小型で、最大30㎝までである。ユウダチタカノハは、尾ビレの白い斑点がなく、目を通る縞模様がタカノハダイは目の上で3つに分かれるが、ユウダチタカノハは分かれていない。
タカノハダイの特徴は、斜めに走る縞模様とエラブタ後端の濃茶褐色の斑点、尾ビレの白い斑点などだ
【生態】
温帯、亜熱帯の岩礁域や藻場などの比較的浅い海に単独で棲息している。
食性は雑食で、小型甲殻類や藻類などを捕食しているほか、頑丈な唇を海底に押しつけて、砂や砂利などと一緒に底棲生物を吸い上げ、鰓耙(さいは)で漉し取って食べる。
産卵期は秋~冬。卵は、直径1㎜程度の分離性浮遊卵で、24~48時間後に孵化し、仔魚は浮遊生活をしながら成長する。初夏頃、タカノハダイの稚魚をタイドプールなどで見かけることもあるが、成長とともに深みへ移動し、底棲生活に入る。
【文化・歴史】
タカノハダイの名の由来は、体の模様が鷹の羽の模様に似ているため。漢字でも、「鷹羽鯛」の字を当てる。
各地の磯で普通に見られる魚であるため、地方名も非常に豊かである。関西などで一般的な「ヒダリマキ」という別名は、体を走る縞模様がぐるりと巻いているように見えるからといわれるが、由来ははっきりしていない。そのほかには、磯臭さからきたションベンタレ、センチフキ(センチ=雪隠(せっちん)=トイレ)、鷹の羽に似た体の模様からきたタカ、タカッパ、タカノバ。同じく、模様がキジに似ているので、キジダイ。子鹿の模様に似ているので、シカウオ。縞模様からシマダイ、シマバチメ、フトンジマ、シマキコイ。ヒレの棘が鋭いところから、テッキリ(手切り)などの名もある。
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