【分類・分布】
スズキ目アジ科シマアジ属に分類される海水魚。アジ科には、和名「アジ」が付く種のほかにも、カイワリ、ツムブリ、ブリ、カンパチ、ヒラマサなど、約30属150種が所属する。
シマアジは暖海性の魚で、西大西洋からインド洋、地中海、西太平洋などの熱帯域を除く世界の暖海に広く分布。日本近海では、太平洋側は岩手県南以南、日本海側では能登半島以南に棲息している。
【形態】
成魚は、最大で全長1m22㎝・体重18.1㎏の記録があるが、通常は全長1mほどまで。体は長楕円形で体高が広く、側扁する。ブリやヒラマサなどに似ているが、それらより体高があり、唇が分厚い。側線にはアジ科特有の稜鱗(りょうりん=ゼイゴ)があり、ブリ属の魚には稜鱗がないため、これも見分けるポイントとなる。
背中は銀の地色に青緑色が混じり、腹は銀白色、体側の中央部には、口から尻尾にかけて鮮やかな黄色い帯が走っている。この帯は、成長に従い不明瞭になる。エラブタの後ろには、黒色斑がひとつある。
吻(ふん)は眼径よりも長く、前に突き出る。口は漏斗状になっており、伸ばすと薄い膜でできた蛇腹状になる。この特異な口を使い、砂を海水と一緒に飲み込んで、砂の中に潜んでいるイソメ類やエビ、カニといった甲殻類をエラで濾し取って捕食する。
大型になればなるほど、魚類まで捕食するようになるが、口には歯がないので、どちらかというと小魚の群れに突入し、海水ごと吸い込むような食べ方をする。また、この伸縮自在の唇は蛇腹のようになっている部分が薄い膜になっているため、釣りバリが掛かったときに強い引きで口が切れバラシの原因となることが多く、釣り人からは「ガラスの唇」などと呼ばれている。
背ブリやカンパチなどと比べ、体高があり、稜輪があるのが特徴。エラブタ後部の黒斑もポイント
【生態】
沿岸から沖合の水深200mほどまでのエリアに棲息している。水温18~24℃をもっとも好むといわれ、快適な水温や環境を求めて回遊し、ときには湾内や汽水域にも入ってくる。
繁殖期は冬で、日本近海では12月〜翌年3月に産卵する。メスが産み放った卵にオスが放精し、受精。約40時間後に孵化し、浮遊生活に入る。その後、50日で体長2~3㎝になり、親魚の姿に近づく。
稚魚時代は流れ藻に着いて暮らし、1年で体長18㎝、2年で30㎝、3年で40㎝程度に成長する。手の平サイズの幼魚から2㎏までの若魚は、100~200匹の群れを構成して行動する。大きな群れになると、1,000匹を超えることも珍しくはない。ゆえに、1匹釣れたら同じサイズのシマアジがまだまだいると考えてよい。ただし、成長するにつれて群れの構成は小規模になり、老成するとほとんどの個体が単独で行動するようになる。
【文化・歴史】
標準和名「シマアジ」は、もともと東京・和歌山・富山・高知などで呼ばれていた呼称で、体側に縦帯があることから「縞鯵」、もしくは伊豆諸島などの島嶼(とうしよ)での漁獲が多いことから「島鯵」の名がある。
ほかに、日本での地方名はオオカミ(伊豆諸島での大型個体の呼称)、コセ(和歌山)、コセアジ(高知)、ヒラアジ(熊本)、カツオアジ(鹿児島)、カイワリなどがある。「カイワリ」「ヒラアジ」は本種だけでなく、大型で扁平な体をしたアジ類の混称で用いられる。カイワリは、標準和名がカイワリという種もあるため、混同しやすい。
英名は“White trevally”(白いアジ)。または和名と同じ由来で“Striped jack”(縞アジ)とも呼ばれる。
シマアジは、「アジの王様」といわれるほど、アジ科のなかでもとくに味がよいとされている。その反面、数が少なくなかなか一般には出回らなかったが、近年、養殖が盛んになり、輸入物も多くなったことから、スーパーなどにも並ぶようになった。刺身用のさくとなったものが多いが、デパートなどでは丸の状態で見ることもある。
さらに、一部の海上釣り堀では、目玉魚種として養殖物のシマアジを放流して人気を博しているところも多い。
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