【分類・分布】
ダツ目サンマ科サンマ属に分類される海水魚。サンマ科は2属4種から成り、日本近海に棲息するのは本種のみである。
分布域は、日本近海から北アメリカ大陸沿岸部までの北太平洋で、季節によって広く回遊する。日本近海のサンマは、春~夏にかけてオホーツク海周辺まで北上し、水温が下がり始めると寒流に乗って四国周辺まで南下する。太平洋側と日本海側では、北上・南下の時期が違っている。
【形態】
細長い紡錘形の体形が特徴で、体色は背側が黒みを帯びた青色、腹側は銀白色。
頭は細く小さく、口はやや尖っている。下アゴが上アゴより突き出ていて、下アゴの先端は黄色~朱色を帯びている。背ビレと尻ビレは体の最後方にあり、尾ビレまでの間には小離鰭(しょうりき)が並ぶ。小離鰭の数は、背側は6~7基、腹側は6~9基。
食卓でもおなじみの魚なので、姿形もお馴染み。下アゴの先端がよく見ると黄色〜朱色
【生態】
数百~数千尾の大きな群れで表層付近を回遊し、動物性プランクトン、小魚、甲殻類などを捕食する。逆に、マグロ類、クジラ、海鳥などによく捕食されることから、食物連鎖のなかで重要な役割を担っているといわれる。天敵から逃げる際には、トビウオのように水面から飛び出し、海面上を跳ねるように泳ぐこともある。
主な産卵期は太平洋側では春と秋、日本海側では夏頃とされ、直径2㎜前後の大型の粘着卵を流れ藻や漂流物などに産む。卵には表面の一端に10数本、さらに90度離れた場所に1本の付属糸があり、これによって漂流物に絡み付く。
受精後20℃の温度下では10日前後で孵化。成長は早く、春産まれの稚魚は1年で24㎝、2年で30㎝以上に成長する。秋産まれの稚魚は、1年で17㎝、2年で28㎝ほどになる。海域や産まれた時期にもよるが、21~27㎝程度で成熟し、寿命は1~2年。32~35㎝程度のものが多いが、最大で全長40㎝まで成長する。
【文化・歴史】
日本の秋の味覚を代表する大衆魚であるが、庶民がサンマを食べるようになったのは江戸時代中期頃だという。江戸時代の百科事典である『和漢三才図会』には、サンマについて「魚中の下品(げぼん)なり」という記述がある。サンマは当時庶民の食べ物であり、武士など上流階級の食べ物ではないとされていた。
落語の「目黒のさんま」は、それまでサンマを食べたことのなかったお殿様が、鷹狩りに出かけた先で偶然食べたサンマのおいしさが忘れられずに、滑稽な言動をするという噺(はなし)である。
サンマという名前については、細長い魚を意味する狭真魚(サマナ)を語源とする説、大きな群れを意味する沢魚(サワンマ)を語源とする説がある。
漢字では古くは狭真魚、青串魚などと書かれていたが、秋刀魚という字を当てるようになったのは明治末期~大正時代頃とされる。秋が旬であり、細く銀色の魚体が刀を連想させることから来ているのは、いうまでもない。
熊野、志摩地方、淡路地方などではサイラと呼ばれ、学名を「Cololabis saira」というのは、この地方名に由来している。ほか、バンジョウ(佐渡地方)、カド(三重)、サザ・サザイオ(長崎)などの地方名がある。
↓こちらもあわせてどうぞ