【分類・分布】
日本沿岸に棲息するカレイ科の魚はおよそ40魚種。釣り人に知られた種としては、本種のほかにマガレイ、スナガレイ、イシガレイ、ヌマガレイ、メイタガレイなどがある。最大で2.5mにもなるオヒョウ(ハリバット)も、カレイ科の魚だ。マコガレイはイシガレイと並んでもっともポピュラーな種で、釣りの対象魚として人気が高いのと同時に、市場価値も高い。
日本近海におけるマコガレイの分布域は、北海道南部から九州・大分県、朝鮮半島、東シナ海となっている。
【形態】
カレイ目の魚はいずれも左右非対称であり、横向きに泳いで、目が体の左右どちらかに片寄って付いている。「左ヒラメの右カレイ」といわれるように、ヒラメ科(ヒラメ、タマガンゾウビラメなど)やウシノシタ科(クロウシノシタなど)といったほかのカレイ目の魚と違いは、ヌマガレイを除いてカレイ科の魚は両眼が体の右側にあることだ。
マコガレイは、近縁種のマガレイと似ているが、マコガレイの無眼側(裏側)は一面が白色である。また、マガレイでは、背ビレと尻ビレの基部に黄色い帯がある。また、イシガレイは有眼側の背中、側線付近、腹に石状の突起物があることで見分けられる。
他のカレイ類と同じように平たい体型で右側に目がある
【生態】
水深100m以浅の砂底、もしくは砂泥底に棲息している。河口付近にも棲息するが、汽水域では本種よりも近縁種のクロガシラカレイやクロガレイに出会う確率が高い。また、イシガレイやヌマガレイなどと異なり、淡水域にまでは入り込まない。
成魚はゴカイなどの多毛類や二枚貝類、ヨコエビ類などを捕食するが、仔魚期には珪藻類や貝類の幼生などを食べる。
産卵期は11~2月で、北の海域では遅くなり、北海道では春まで続く。産卵場は、湾外や湾口付近の潮通しのいい水深10~60mの海底。1匹のメスが30万~330万粒の卵を産む。カレイ科の魚は浮性卵であるものが多いが、マコガレイは例外的な沈性付着卵である。
孵化までを海底で過ごし、体長3㎜ほどの仔魚になると浮遊する。全長7㎜ほどで左眼が移動し始め、体長10㎜ほどになると変態が完了した稚魚になる。この成長の過程で、仔魚は湾内に移動し、泥底に着底する。浮遊する期間は、カレイ科としては短く、30日以下。稚幼魚期は湾奥の浅い場所に移動し、1年で体長8~10㎝、2年で15~20㎝、3年で23㎝ほどに成長する。
成熟には、早い個体で2年、通常は3年かかる。また、オスよりもメスのほうが大きくなり、オスは全長35㎝程度であるのに対して、メスは全長50㎝ほどに成長する。報告されているなかでは、寿命はオスのほうが長く、オスは8歳、メスは11歳。平成7年には北海道・知内沖で13歳(全長468㎜)のメスが捕獲されているが、これは非常に稀な例と考えられている。
カレイの仲間は、体色や模様を変えて周囲の環境に同化するのが特徴。目の周囲の色を見て体色を変え、白い砂の場所では白っぽく、黒い砂や泥の場所では黒っぽく変色する。
【文化・歴史】
ヒラメやカレイを「比目魚(ひもくぎょ)」とも呼ぶ。これは中国の伝説にある、目がひとつで、2匹並んではじめて泳ぐことができるという魚のことで、仲のよい夫婦のたとえとされる。また、英語ではカレイ目の魚を「Flatfish(平たい魚)」と呼ぶ。そのうち、カレイやヒラメは「Flounder」と呼ぶが、この単語には「もがく」「まごつく」の意味がある。
日本名「カレイ」の語源には諸説あり、そのうちのひとつには、「かたわれ魚」からきているというものがある。身の一方が黒く、一方が白いことと、目が一方に片寄って付いていることから、そう呼ばれていた。ほかに、朝鮮半島や中国大陸から食べ方が伝わったから「韓エイ」「唐エイ」、痩せたエイだから「枯れエイ」などの語源という説がある。これらから、カレイの形がエイを連想させたことがわかる。
カレイ科の魚では、希少価値の高いマツカワガレイが最高級といわれるが、マコガレイも市場価値が高い高級魚の部類に入る。特に大分県日出町では、「城下鰈(しろしたかれい)」の名で珍重されており、町の特産品ともなっている。
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