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クロカジキ【黒梶木】生態編

クロカジキ【黒梶木】

【分類・分布】

カジキはスズキ目カジキ亜目(Xiphi-oidei)に分類される魚の総称である。いずれも温暖な海を高速で遊泳する大型肉食魚で、上アゴが剣のように長く鋭く伸びて吻を形成する。太平洋、インド洋、地中海、大西洋など全世界の海に棲息しており、食用やトローリングによるスポーツフィッシングの対象魚としても重要な魚種のひとつだ。生態や肉質がマグロに似ることから「カジキマグロ」という俗称もあるが、マグロとはまた異なる分類群である。
カジキ亜目は、メカジキ科(Xiphiidae)とマカジキ科(Istiophoridae) の2科からなる。分類によってはサバ亜目に含めたり、カジキ上科(Xiphioidea)としたりもする。全世界に10~12種が分布し、このうち日本近海には、メカジキ科のメカジキ、マカジキ科のマカジキバショウカジキ、フウライカジキ、シロカジキ、クロカジキの6種が棲息している。
クロカジキは太平洋、大西洋、インド洋の熱帯や温帯の海域に棲息している。日本近海では、本州南部太平洋岸から九州北岸・朝鮮半島南岸まで分布し、カジキ類のなかではとくに高温を好む傾向にある。

【形態】

一般的な大きさは、60~250㎏であるが、IGFA世界記録は1982年にハワイ沖で釣れた624㎏。シロカジキとともに、カジキ類を代表する大型種である。
体は前後に細長く、側扁する。ほかのカジキ同様に上アゴが前方に長く尖り、吻を形成する。第1背ビレは全体的に低いが、前方だけ鎌状に高い。体長は体高の4.9~5.6倍、体幅の10倍前後になる。吻は長く、横断面はほぼ円形である。ウロコは体表に密に分布しており、その先端は長くて鋭い。頭は大きく、第1背ビレ起部から眼前部に至る頭部外縁は著しく隆起する。尾ビレは強大で二叉し、尾柄部付近の両側にそれぞれ2条ずつの隆起線がある。
体色は、体の上部がコバルトブルーで、下部はシルバー。体側には水色の横縞が十数本走る。死ぬ直前に、体色は輝くばかりの鮮やかなブルーへと変化する。英名のブルーマーリン(Blue marlin)は、これにちなむものである。

【生態】

クロカジキは一生のほとんどを沖合で過ごし、暖流に乗って数百~数千㎞もの距離を回遊する。漁獲率や体長組成の変化の比較により、季節的に南北回遊を行うことが指摘されており、雌雄の回遊も異なっていると考えられている。ただし、クロカジキは標識放流での再捕率が極めて低く、くわしい回遊経路については解明されていないのが現状である。
本種は、シロカジキやメカジキ同様、メスのほうがオスよりも大型になることが知られている。4歳までは、雌雄の成長速度はほぼ同じであり、1歳で82㎝、2歳で145㎝、4歳で250㎝になる。その後、オスは成長速度が鈍るが、メスは4歳以降も成長速度をそれほど減少させずに成長を続ける。
成熟体長は、オスで130~140㎝、メスでは東部太平洋において170~180㎝であるといわれている。
産卵期は、赤道周辺では周年、北西太平洋では4~6月、中部北太平洋では5~9月、南緯15度のグレートバリアリーフ周辺では11~3月頃という報告例がある。稚魚の分布状況から、産卵場は西経130度以西の、赤道を挟む南北20度の海域だと推察されている。
クロカジキは、成長に伴う形態の変化が著しい。吻は成長の初期にやや長くなるが、一度短くなり、再び長く伸びて成魚の形になる。また、背ビレに関しても、成長初期に一度非常に高くなるのだが、それから徐々に低くなる。とくに背ビレ後半部が非常に低くなって成魚の形に達する。
本種は、体が大きく運動性の高いものを食べる傾向にあることが知られている。主にイカ類、魚類、甲殻類を好んで食べており、なかでもカツオやマグロの幼魚を好んで食べる。調査機関がインド洋〜太平洋の広い範囲で採取された体長90~345㎝のクロカジキ2,728尾の胃の内容物を調べたところ、2,794尾のカツオが出てきたという報告がある。いずれのエサも、クロカジキは長い吻で叩いて弱らせてから食べる知恵がある。

【文化・歴史】

クロカジキはカジキ類のなかでもっとも大きくなる種のひとつであり、スポーツフィッシング界ではメインターゲットとされて高く評価されるが、商業価値は比較的低い。
英語では「Billfish」(ビルフィッシュ=嘴(くちばし)を持つ魚の意)と呼ぶが、マカジキ科のみを「Billfish」とすることもある。また、メカジキは「Swordfish」(ソードフィッシュ=剣を持つ魚)、バショウカジキ類は「Sailfish」(セイルフィッシュ=帆を持つ魚)、フウライカジキ類は「Spearfish」(スピアフィッシュ=槍を持つ魚)という呼び分けもされている。
さらに、クロカジキはその鮮やかな体色の青からブルーマーリン(Blue marlin)とも呼ばれるが、死後には黒ずんでしまうことから和名ではクロカジキとなる。この標準和名は、和歌山県田辺市周辺での地方名から採られた。その他、日本での呼び名として、カツオクイ、カトクイ(紀州各地)、クロカ、クロカワ、シロカ(東京)、ゲンバ(鹿児島県)、マザアラ(神奈川県・三崎)、ンジャーアチ(沖縄)などがある。

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プロフィール

生まれ故郷近くを流れる利根川・手賀沼にはじまり、国内外の海・川・湖・沼・池・・・と、ホソのマブナから南海のジャイアント・トレバリーまでを釣り歩く「さすらいの五目釣り師」。また、生来の手作り好きが高じて、20代はログビルダー、塩作りなどの職も経験。
出版社で雑誌編集に携わった後、独立。それを機に家族とともに房総の漁師町へ移住する。釣りの楽しさ、DIY・田舎暮らし&自給自足、アウトドア、料理、保存食などの世界を紹介するライターおよび編集者。詳しくはこちらへ。

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