【分類・分布】
スズキ目トラギス科トラギス属に分類される海水魚。トラギス科は5属54種がおり、トラギス属には、クラカケトラギスのほかに、トラギス、オキトラギス、アカトラギス、カモハラトラギス、ユウダチトラギス、マトウトラギス、マダラトラギス、コウライトラギスなどがいる。
クラカケトラギスは、トラギス属のなかでも比較的よく釣れる種類で、日本海側では新潟県、太平洋側では千葉県以南の各地、海外では韓国南部、台湾、ジャワ島などにも分布している。
【形態】
体は円筒状で、背ビレと尻ビレの基底部が長い。眼は大きく飛び出している。
体色は、背側が赤褐色で腹側は淡黄色から淡赤色。4本のV字型の暗色斑と、胸ビレの基底部と眼を通る2本の暗色の帯がある。そして、背側の尾の付け根には、黒色の斑点がひとつある。全長は、最大で約20㎝前後。
近縁種に体形や体色が似たものは多いが、本種は背中のV字型の斑紋が特徴的なので区別しやすい。トラギスと混同されることがあるが、トラギスは背ビレが先端の棘条部分と軟条部分の間に切れ込みがあり、クラカケトラギスにはない。また、体色や斑紋の色は似ているが、トラギスは体側に明るい色の縦線が1本通っている。さらに、頭部の細い縞模様に青みがあるのがトラギスで、黄色みがあるのがクラカケトラギスとなる。
クラカケトラギスは、従来から体色や斑紋にふたつの型があることが知られていたが、近年、遺伝的に種レベルの分化が認められたため、新たに一方の型を「アマノガワクラカケトラギス」(学名:Parapercis lutevittata)として新種登録された(従来のクラカケトラギスの学名は、Parapercis sexfasciata)。
V字状になった斑紋と顔まわりの細い縞模様が黄色っぽいのが、特徴のクラカケトラギス
【生態】
主に砂底や砂泥底に棲息しており、小さな根が点在するエリアを好む。
食性は肉食で、甲殻類やゴカイ類などの底棲生物などを捕食し、大型に成長すると小魚も食べるようになる。
ほかのトラギスの仲間は、水深100m程度の比較的深場に棲息するが、クラカケトラギスは投げ釣りの射程範囲である浅場にも棲息する。ただし、冬場になると沖合の深場へ落ちる。
産卵期は2~6月頃と10~11月頃。
【文化・歴史】
漢字では、「鞍掛虎鱚」。そのまま、馬の鞍を掛けたような模様のキスという意味からだ。ただし、キスと名が付くが、シロギスはスズキ亜目キス科であり、分類上は近い種類ではない。むしろ、ハゼ類に似ていることから、関西や瀬戸内地方では「トラハゼ」と呼ばれることが多い。ただし、ハゼ類もハゼ亜目ハゼ科であり、こちらも分類上では近い種類ではない。
そのほかの地方名としては、ゴズ、コズ、ゴジ、イシブエ、オキハゼ、ゴロハチ、トウグロ、ドンコ、ドンポ、などがある。
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