【分類・分布】
タイと名が付く魚は日本近海だけで300種以上いるとされるが、いわゆる「あやかりダイ」が多く、マダイ、チダイなどの仲間であるスズキ目タイ科の魚はわずか13種だけである。そのなかの一種であるキダイはタイ科キダイ属の魚で、房総半島以南から南西諸島を除く西日本に分布している。
キダイの近縁種としてはキビレアカレンコがおり、その名の通り、背ビレや胸ビレが黄色いことで見分ける。また、キダイとは分布域が異なっており、奄美群島以南の琉球列島沿岸に棲息している。ただし、キダイ、キビレアカレンコともにレンコダイと呼ばれることがある。
【形態】
体は側偏した楕円形で、典型的なタイ型。全長は最大で40㎝になるが、釣りや漁獲されるものは30㎝程度のものが多い。基本的に、マダイやチダイより小型。
体色は朱色で背側は色が濃く、腹側は淡い。マダイのような体側の青い小斑点はなく、目から鼻孔、上アゴが黄色く、背ビレの下に淡い黄色い班がある。マダイに比べ、鼻孔周辺がへこんでいて、口はやや突き出ている。歯は円錐状に尖り、臼歯がない。
マダイのような体側の青い斑点が亡く、全体に黄色みが強いのが特徴。
【生態】
主に、水深50~200m程度の海域で群泳し、小魚、甲殻類、頭足類などを捕食する。
産卵は、海域によって多少差があるが、初夏と秋の2回とされる。マダイのように産卵のために沿岸に近づくことはなく、沖合で分離浮性卵を産卵する。体長は1年で全長約10㎝、2年で15~16㎝、3年で20㎝、4年で25㎝に成長する。
一部の雌は2~3年で成熟し、雌性先熟の性転換を行うため、5歳以上の大型個体は雄が多い。
【文化・歴史】
キダイは「黄鯛」と書き、頭部が黄色みを帯び、背に黄色い斑点があるところからきた名である。市場においては、「レンコダイ」と呼ばれることも多い。これは群れでいるため、延縄漁などで連なって漁獲されるさまからきたものである。キダイが漁獲されるようになったのは明治以降。沿岸部には棲息しないため、それまではほとんど獲られていなかったが、漁船や底引き網などが開発されるに従い、漁獲量が増加するようになった。
そのほかの地方名としては、ハナオレダイ(九州西部)、メンコダイ(愛媛)、コダイ(九州南部・高知)、バンジロ・バジロ(中国地方)、ベンコダイ、アカメ、メッキなどがある。
バンジロは、漢字では「飯代」。昔は米の飯は高価であり、一度にたくさん獲れるキダイをご飯の代わりにした、というのが由来であるとされる。
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