【分類・分布】
ケンサキイカは、ツツイカ目ヤリイカ科ヤリイカ属に分類されるイカの仲間。ツツイカ目のイカは、基本的に胴内に軟骨をもつタイプのイカで、近い種類のイカとしては、ヤリイカやブドウイカ、ジンドウイカ、アオリイカなどがいる。
青森県以南に広く分布。ヤリイカと比べて暖かい海を好み、とくに本州中部以南、九州周辺で多く水揚げされている。そのほか、東シナ海、南シナ海、インドネシア沿岸まで分布している。
【形態】
外套部の長さは通常20~40㎝で、雄のほうが大きく、雌は30㎝程度までの個体が多い。体形はヤリイカよりもややずんぐりとしており、腕も太め。体色は透き通るような乳白色をしており、スルメイカが茶色みを帯びているのに対し、白みが強い。
孵化した時期と棲息場所によって体型が変化するため、胴の形が細長いタイプ、やや太めのタイプなどがおり、一見別種のイカのように見える。
例を挙げると、日本海西部のブドウイカがそのひとつ。ブドウイカは小型のまま成熟するタイプのケンサキイカで、典型的なケンサキイカと比べて胴が丸みを帯びて太く厚みがあり、腕も太く長いのが特徴。外套長は25㎝程度でエンペラが外套長の2/3程度まである。触腕先端の吸盤部が広く大きく、吸盤そのものも大きい。
【生態】
冬場は水深80~100mほどの深場に棲息し、春先の水温上昇とともに浅場へやってくる。
産卵期は、産卵期は4~10月頃までの長期に渡り、地方により時期は大きく異なる。海底の砂地などに、200~400個の卵が入った長さ10~20cmの寒天質の卵嚢を産みつける。1杯の親は卵嚢を50個ほど産むとされ、卵の数は合計1万個を超える。孵化した稚イカは、秋になると水深60~100m付近へ落ち、12月以降になるとさらに深場へ落ちてゆく。その他のイカ類同様、寿命は1年間。
捕食している主なエサは、動物性プランクトン、イワシをはじめとする小魚、甲殻類など。
【文化・歴史】
ケンサキイカという名は、ヤリイカが槍を語源とするのと同様、剣のように尖った姿が由来。英名もSwordtip(剣の先端の意)Squidであり、和名と同様の語源である。
関東ではアカイカと呼ばれているが、正式和名のアカイカは、ムラサキイカやバカイカなどと呼ばれるアカイカ科のイカで、ケンサキイカとは別種だ。
また、山口県や島根県の石見地方では、ケンサキイカのことをマイカと呼んでいるが、同じ島根県でも出雲・隠岐地方ではスルメイカのことをマイカと呼ぶ。マイカという呼び名は、その土地で多く獲れ,馴染みの深いイカを呼ぶ場合が多く、このような混同が生まれたものと思われる。
その他の地方名としては、ゴトウイカ(九州地方)がある。これは五島列島周辺でよく獲れるためと思われる。
ブドウイカは前述の通り、孵化時期と棲息地の違いによって生じた体型の違うタイプのケンサキイカの呼び名。
佐賀県唐津市の呼子地区は、イカの活き造りが名物料理。これにはケンサキイカが使われているが、現地ではヤリイカという呼称が一般的となっている。
東京湾では、初夏から釣れ始める小型のケンサキイカをマルイカと呼ぶ
↓こちらもあわせてどうぞ