【分類・分布】
カタクチイワシ科カタクチイワシ属の魚で、マイワシやウルメイワシなどのイワシの仲間でありながら分類上は異なっている。
北海道から南シナ海までの西太平洋沿岸に分布しており、マイワシよりも南方系で、より沿岸性が強い。
【形態】
成魚の全長は平均で13~14㎝とマイワシやウルメイワシに比べて小型で、体形もより細長い。体色は、背面部が黒色に近い青灰色となっており、このことから別名で「背黒(セグロ)」とも呼ばれる。逆に、側部や腹部は銀白色をしている。
目が頭部の前のほうに寄っていて、目の後ろまで口が大きく開くのが特徴。また、下アゴが上アゴより極端に短く片寄って見えることが、「カタクチ」の名の由来となっている。
ウロコは薄い円鱗で、非常に剥がれやすいので、市販されているものはウロコが落ちた状態になっているものが多い。
マイワシのような斑紋がなく、体型が細長く、口が大きいのがカタクチイワシの特徴
【生態】
内湾から沖合まで、沿岸域を大群で回遊している。大型の魚食魚などの天敵に襲われた際には、ほかのイワシ類同様、密集隊形をつくって敵の攻撃をかわす。
産卵期は、暖かい地方ではほぼ一年中、北方の群れは春と秋に産卵するものが多い。卵は楕円形の分離浮性卵で、抱卵数は2,000~6万粒。成長が早く、一年経たずに繁殖できるようになり、寿命は2年程度とされている。
成魚はプランクトンをエサとし、海水ごと吸い込み、鰓耙(さいは)で漉し取るようにして捕食する。
【文化・歴史】
漁獲高は、近年ではマイワシよりカタクチイワシのほうが格段に多く、2007年には約36万トンが水揚げされている。
昔から大量に獲れたので、食用だけでなく、飼料や肥料などにも利用されてきた。お正月におせち料理で食べる「田作り」は、カタクチイワシの素干しを砂糖と醤油で煮絡めたものだが、これは、昔から稲作の肥料としてカタクチイワシが使われてきたため、新しい年の豊作を祈って食べられてきたものである。
田作り以外にも、煮干し、みりん干し、しらす、ちりめんじゃこなど、加工品として日本人にはなじみのある魚である。ただし、ほかのイワシ以上に鮮度が落ちやすいので、産地以外では鮮魚の状態で出回ることは少ない。
銚子・飯岡・片貝漁港とイワシの日本有数の水揚げ港を擁する千葉県の九十九里地方では、ゴマ漬け(料理編参照)をはじめとするさまざまなイワシの郷土料理があり、現在でも各家庭でその伝統が引き継がれている。
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