【分類・分布】
イカは主にコウイカ目とツツイカ目に分類されているが、コウイカ目は基本的に舟型の硬い甲をもつ種類。この甲羅はもともと貝の仲間だったイカの祖先が、進化の過程で貝殻をもたなくなった痕跡器官である。
カミナリイカは、スミイカ(正式和名コウイカ)などと同様にコウイカ目コウイカ科コウイカ属に分類される。日本近海では、房総半島以南の主に太平洋側に棲息。朝鮮半島南部、東シナ海、南シナ海などにも分布している。
【形態】
日本近海に棲息するコウイカ科のイカのなかでは、比較的大型になる種類。実際に釣れてくるのは外套長20~25㎝程度のものが多いが、最大では外套長40㎝以上、重さ5㎏ほどまで成長する。
体色は、全体的に茶褐色。外套膜の背面には多数の横縞のほか、楕円形の唇のような形をした眼状紋があるのが特徴。腹側は淡褐色で、細かい斑点はあるが、背面のような斑紋はない。外套膜の左右には外套全体にわたってエンペラがあり、基部に沿って鮮やかな緑色の縁取り線が走っている。
雌や小型の個体は眼状紋が不明瞭でスミイカとの見分けが難しい場合もあるが、スミイカの場合は外套膜の縁取りのラインが白色であることから本種と区別ができる。
8本の触手と2本の長い触腕を持ち、触手の先端には4列、触腕の先端には8列の小型の吸盤が並んでいる。触腕の吸盤数は、1本の足で200個以上に及ぶ。胴内の甲羅は長卵形で、先端にはスミイカ同様、鋭い棘がある。上記のように胴内には甲羅を餅、炭酸カルシウムを主成分とした多孔質の甲羅の内部の気体と液体の比率を変えることによって、浮力を調整している。
触腕先端の吸盤の列数は、カミナリイカは8列、スミイカは12列あること、甲羅の中央にカミナリイカはU字状の太い畝(うね)が見られることなどでも区別できる。また、スミイカは最大外套長が20㎝止まりなので、それを超えるようなものは、ほぼカミナリイカと思ってよい。ただし、釣り場やシーズンはスミイカと変わらない場合が多いので、まとめてスミイカ(コウイカ)と呼んでいる人も多い。
エンペラの基部に沿って鮮やかな緑色の線があるのが、カミナリイカの特徴。
【生態】
通常は水深60~100m程度の砂泥底に棲息し、小型の軟体動物や甲殻類、小魚などを捕食している。
産卵期は3~5月頃。水深15~30mの海底で、雄が雌にアプローチをして交尾をした後、海藻や沈木などに房状の卵を産み付ける。2ヶ月ほどで孵化し、外套長が10㎝ほどになって水温が低下する時期になると深場へ移動する。春になると、成熟して再び浅場へ移動し、産卵を行う。ほかのイカ類と同様、寿命は1年とされる。
【文化・歴史】
カミナリイカは別名モンゴウイカ(紋甲烏賊)と呼ばれるが、これは胴にある特徴的な眼状紋からくる呼び名である。ただし、市場では輸入物のコウイカ(ヨーロッパコウイカ、トラフコウイカなど)をモンゴウイカと呼ぶので、混同しやすい。
輸入物は冷凍のロールイカなどに加工されて安価に売られているが、近海物のカミナリイカは、スミイカやシリヤケイカと比べると漁獲量が少なく、高級イカとして扱われている。
カミナリイカという名の由来は、雷の鳴る夏~秋の季節が旬であるところから、またはカミナリの鳴る場所で多く獲れるからという説がある。
英名では、外套膜の唇のような形状の眼状紋からKisslip(キスをする唇のような)Cuttlefish(コウイカ類) と呼ばれている。
地方名としては、モンゴウイカのほかに、コブイカ、ギッチョイカ、センドウイカ、マルイチなどがある。
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