【分類・分布】
カイワリが属するスズキ目アジ科には、約30属150種が認められている。本種は一種のみでカイワリ属を形成するが、インドカイワリ、コガネアジなど、21種が属するヨロイアジ属に分類する見解もある。
カイワリは暖海性の魚で、インド太平洋の熱帯・温帯海域から南東太平洋のイースター島沿岸、大西洋のアフリカ南西部沿岸の暖海域に広く分布する。日本では、太平洋側では宮城県以南、日本海側では能登半島以南に分布している。
【形態】
全長は平均20~30㎝ほどだが、大型個体は40㎝に達する。体高は広く、著しく側扁し、ひし形に近い形状。歯は絨毛(じゆうもう)状で歯帯を形成し、唇はそのほかのアジ類同様軟弱。体は細かな楯鱗(じゆんりん)に覆われており、体色は背部が暗青色、体側から腹部は黄色がかった銀白色をしている。
背ビレと尻ビレの最後の軟条は、直前の軟条からやや離れている。また、第2背ビレには黒色、尻ビレには暗黄色の縦帯がある。幼魚期には、体側に6~8本の暗褐色の横帯が出るが、成長とともに消失する。
小型のシマアジやギンガメアジなどと混同されることがあるが、第2背ビレと尻ビレに縦帯があることなどで区別できる。
ボート釣りで釣れたカイワリ。20cm程度が平均サイズ。第2背ビレの帯が見分けやすい特徴。
【生態】
沿岸からやや沖合いの水深200m以浅の砂泥域の底層で生活している。
一般にアジ科の魚は遊泳力の高い肉食性で、主に小魚、甲殻類、貝類、頭足類、多毛類などを捕食するが、本種や近似種であるシマアジなどは、ネクトン(遊泳する水棲生物)を捕食する。さらに、海底の砂泥を堀ってベントス(海底を這う水棲生物)を漏斗(じようご)状の口を伸出させて砂泥ごと吸い込んで捕食する。
日本近海での産卵期は9~11月で、海表面を浮遊する球形の分離浮遊卵を産む。稚魚はクラゲに、また、幼魚はハタ科などの大型の魚に寄り添って泳ぎ、捕食者から我が身を守る俗にいう「ヒッチハイク行動」をとることが知られている。
【文化・歴史】
二枚貝が左右に開いた状態、もしくは植物が芽を出した直後の双葉の状態を「貝割」というが、本種の尾の形がこれらの形に似ていることから「カイワリ」と命名されたといわれている。
地方名も多彩で、ツノアジ(神奈川県・相模湾、および静岡県・沼津市)、メカリアジ(静岡県・焼津市)、ピッカリ(神奈川県・真鶴町)、ヒラアジ(愛知県・一色町)、ゼンメ(鹿児島県・南さつま市)、メッキ(三重県・尾鷲市、広島県・倉橋島、長崎県・長崎魚市場ほか)など、各地で異なる名称で親しまれている。その他、「オキアジ」や「シマアジ」と呼ぶ地方もあるが、これらを標準和名とする別種もいるので、混同しやすい。
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