【分類・分布】
サバ科に分類される海水魚で、1種のみでイソマグロ属を形成する。同じサバ科ではあるが、クロマグロやキハダなどはマグロ属に分類され、イソマグロはマグロという名は付くが異なった種類の魚である。
インド洋、西太平洋の熱帯域に分布し、オーストラリア北岸、紅海、アフリカ東岸まで広く棲息している。国内では主に南日本に分布し、小笠原諸島や南西諸島に多く見られる。
【形態】
体色は背側が鈍い藍色、腹側は銀白色。体形は紡錘形でマグロ類に比べると細長い。また、下アゴがマグロ類と比べて厚みがあり、口内には鋭く尖った歯が並んでいる。
マグロ類やカツオ類などと同様、イソマグロも高速で泳ぎ続けるために「奇網」という血管構造をもっている。これは静脈と動脈が平行して隣接して巡っている血管の構造で、エラから入った酸素を多く含んだ新鮮な冷たい血液は、動脈を通り、隣り合った静脈内の体温で温まった血液の温度を下げている。同時に熱をもった筋肉を冷やして体温の過度の上昇を抑え、また周囲の水温よりも体温を適度に高く保つ仕組みだ。この仕組みとエラからの酸素吸収率が高いおかげで、イソマグロは休むことなく泳ぎ続けることができる。
成魚は全長1~1.5m、重さ30~40㎏ほどになり、2m、80㎏以上に成長した大型個体も見られる。
【生態】
外洋に面した沿岸部や島の周辺を数十尾ほどの群れで遊泳している。大型になるほど小さな群れで行動し、単体で行動するものもいる。
遊泳能力は卓越しており、速い潮の中でも高速で泳ぐことができる。
肉食性で、棲息環境を同じくするムロアジ、タカサゴなどのほか、イカ類などを捕食している。
【文化・歴史】
分類的にマグロに近いわけでないのにマグロという名が使われているのは、大洋に広く分布していることや姿形、食性などがマグロに似ていることによる。また、英名の「Dogtooth tuna」は「犬のような歯を持つマグロ」という意味で、マグロ類に比べると鋭く尖った歯を持つことから付いた名前である。
地方名はイソンボ、イソゴッポウ(伊豆)、トカキン(沖縄)、タカキン(奄美地方)など。
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