【分類・分布】
イシナギ科イシナギ属には2種が分類されている。一般にイシナギといえば、正式にはオオクチイシナギを指すが、もう1種コクチイシナギ(Stereolepis gigas)がいる。
ただし、コクチイシナギは主にアメリカ・カリフォルニア周辺に棲息しており、日本では確認された個体数は、ほとんどない。
オオクチイシナギは、北海道から屋久島周辺まで国内に広く分布している。とくに、北海道や千葉県、伊豆沖、紀伊半島沖などで多く見られる。
【形態】
全長2m、200㎏超まで成長する大型魚。体形は長楕円形で、やや側扁している。体色は全身が灰褐色。幼魚には4~6条の黒褐色の縦帯があるが、成長するにつれて消失する。ウロコは小さく櫛鱗で剥がれにくい。口が大きく、上アゴ後端は目の中央下まで達する。背ビレは、棘部と軟条部の境が深く欠刻している。
ハタ科の魚と似ているが、主鰓蓋(さいがい)骨の棘数がハタ科は多くが3つ、イシナギ科はふたつであることから区別できる。また、オオクチイシナギとコクチイシナギの外見の違いはほとんどなく、口の大きさが違っている程度である。
釣り上げられて海面に浮上してきたイシナギ。狙ってもなかなか釣れる魚ではなく、大物釣り師の憧れの的だ
【生態】
水深400~600mの深海の岩礁帯に棲む。動物食性で、主に魚類、甲殻類、頭足類などを捕食する。
くわしい生態はあまりわかっていないが、産卵期は5~6月頃で、その時期には100~150mほどまで浮上して産卵すると推測されている。孵化後、幼魚のうちは比較的浅場にいるが、成長するにつれ深場に移る。
【文化・歴史】
地域によってはモロコとも呼ばれるが、ハタ科のクエもモロコと呼ばれるため混同しやすい。別名としては、秋田や青森でオヨ、オオヨ、富山でオオイオ、各地でオオナなど。いずれも、魚体が大きいことが由来となっている。
神奈川県の羽根尾遺跡では、縄文時代前期のものとされるイシナギの骨が出土している。古文書にも「石投」の名で登場するなど、古くから食べられてきた魚である。
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