【分類・分布】
カレイ科は、北極海、太平洋、インド洋、大西洋の沿岸の浅い海から水深 1,000 m の深海までに棲息する海水魚の仲間で、世界で100種ほどが知られる。
うち、日本近海に棲息するのは、本種のイシガレイのほか、マガレイ、マコガレイ、ババガレイ(ナメタガレイ)、ホシガレイ、メイタガレイ、アカガレイ、オヒョウなどの40種あまり。
イシガレイは単独でイシガレイ属に属しており、南西諸島や九州南部を除く全国各地に分布している。
【形態】
カレイ類に共通していえるが体形は楕円形で著しく側偏し、頭部が右にねじれて両眼が身体の右側に付いている。「左ヒラメの右カレイ」と呼ばれるゆえんで、有眼側を上にして海底に横たわるのが特徴である(ただし例外はあり)。
姿形や体色が非常によく似ているものが多いため、混同されがちだ。なかでもイシガレイ、マコガレイ、マガレイの3種は酷似しているため、見分けが難しい。
マコガレイは全身がウロコで覆われているが、イシガレイの体にはウロコがなく滑らかで、その名の通り、有眼側の背から尾にかけて、大きく縦に並んだ石のような骨板があることで区別できる。マガレイにもウロコがあるが、マコガレイに比べて大きく、粗雑な並び方をしている。両眼間隔域が狭く、吻(ふん)が尖っており、体の丸みが少ない点も、マコガレイとの違いだ。
【生態】
イシガレイは、水深70m以浅の砂泥底に棲息するが、隣接した淡水域にも入ることが知られている。
産卵期は12月下旬~7月で北ほど遅く、水深20~50m域で産卵すると推定されている。抱卵数は、全長25㎝で20万粒、30㎝で80万粒、35㎝で150万粒。卵は水温13℃前後で、おおむね4~5日で孵化する。
孵化後80日あまりで変体が終わり、底棲生活へと入る。仔魚期の主なエサは、珪藻類、デトリタス(有機物の粒子)、ケンミジンコなどで、成魚になると二枚貝、エビ・カニ類、多毛類のほか、イカナゴなどの魚類も食べる。また、季節的な深浅移動だけで、広域移動はしない。仔魚期は、普通の魚と同様に相称的で、体を垂直にして遊泳しているが、成長に伴って左眼が頭部の辺縁を通って右側に移動する。体も両眼を背面とする水平の形となり、遊泳も垂直から水平へと変化する。同時に、頭部の骨格構造、神経系構造、筋肉構造も変化。この一連の変化を変体という。
オスは2歳、メスは3歳で成熟する。全長30~50㎝のものが多いが、70㎝ほどに育つ個体もあり、「ザブトンガレイ」などと呼ばれる。JGFAの日本記録(2012年2月現在)は、愛知県・亀崎港で釣られた3.48㎏、62㎝。北海道・銭函海岸では、魚拓寸78.5㎝の記録がある。
【文化・歴史】
イシガレイの学名、Kareius bicoloratus(カレイウス・バイコロラツス)の属名であるカレイウスは、アメリカ・スタンフォード大学の学長になった魚類学者であるジョルダンと、その弟子であるスナイダーが命名しており、日本語のカレイから付けられたと思われる。なお、バイコロラツスとは、2色という意味である。
イシガレイという呼び名は古くからあり、医師の武井周作が、1831年に著した『魚(うお)鑑(かがみ)』は、一般の人々が健康を保つのに役立つ健康医学書であるが、ここに133種の魚介類が、いろは順に配列して記述してある。
イシガレイの名は、「かれひ。和名抄に出つ。朱厓記に王余魚(ワウヨギヨ)の字を用ゆ。俗に鰈(テウ)の字を用ゆ。漢名比目魚(ヒモクギヨ)綱目に出つ。種類尤(もつとも)多し。星がれひ。石がれひ。むしがれひ。めいたがれひ。もがれひ。まこがれひ。尤小なるものを、俗にこのはがれひといふ」という一文に登場している。
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