【分類・分布】
八腕形目マダコ科マダコ属に分類される小型のタコ。
北海道南部以南の沿岸域から朝鮮半島南部、中国の沿岸の浅海に棲息している。
【形態】
体色は茶褐色だが、周囲の環境によって変化する。体表は低いイボ状の突起で覆われていて、興奮すると胴や脚に黒い縦帯模様が現れる。
胴長は最大でも15㎝ほどで、タコとしては非常に小型。腕の長さはほぼ等長で、吸盤が2列に並んでいる。マダコの仔と似ているが、脚の付け根の部分に金色の環状紋がふたつあること(下の写真内矢印)で区別できる。
イイダコの特徴である脚の付け根の環状紋。小型のマダコと区別する一番のポイント。
【生態】
水深10mほどまでの内湾で、岩礁や石が点在する砂泥底に棲息する。
昼間は石の隙間やアマモ場に潜むが、大きな二枚貝の殻や空き瓶などに潜んでいることもある。夜になると海底を移動しながらエサを探し、甲殻類、多毛類、貝類などの底棲生物を捕食する。日中でも目の前にエサがあれば積極的に捕食するため、明るい時間帯でも十分に釣れる。
産卵期は冬〜春で、石の間などに長さ4~8㎜程度の半透明の卵を200~600個ほど産む。卵の大きさはマダコのものよりも大きい。
産卵後は、卵のそばで雌が見守って保護する。そして40~50日ほどで孵化するとほとんどの雌は死んでしまう。仔は孵化直後でもすでに1㎝ほどの大きさで、吸盤もあり、そのまま底棲生活を始める。寿命は約1年とされる。
【文化・歴史】
英名の「ocellated」とは、ラテン語で「目のような模様のある」という意味。脚の付け根の紋を指しての命名である。
和名のイイダコは、産卵期の胴の内部にぎっしり詰まった卵が飯粒のように見えるから、または、その卵の食感がご飯のようだからともいわれる。
沿岸の浅海に棲息するため、古代より食用として漁獲されており、弥生時代や古墳時代の地層からイイダコ漁のためのものと思われる小型の蛸壺が出土している。
現代は、底引き網による漁獲がほとんどだが、瀬戸内海沿岸などでは蛸壺や貝殻に隠れるという習性を利用した二枚貝を使った仕掛けで捕獲しているところもある。
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