【分類・分布】
スズキ目キス科には3属で約30種類がおり、日本産のキス類としては、キス属のシロギス、ホシギス、モトギス、アトクギス、アオギスの5種がいる。
このうちホシギスは、種子島以南に分布する南方系のキスの仲間で、とくに奄美諸島や沖縄周辺ではポピュラーな種類である。世界的には日本を北限として、台湾、フィリピン、インド、オーストラリアなどにも広く分布している。
日本産南方系のキス類としては、ほかにモトギスがおり、こちらも沖縄本島以南に分布する。モトギスは河口周辺を好んで棲息するため、近年ではダム工事などによる河川や河口の環境変化により、数が減っているとみられる。また、アトクギスはもともとインド洋・西大西洋に分布しており、日本にはいないとされていたが、2001年に西表島で確認された。日本では希少種であり、なかなか目にすることはない。
【形態】
ほかのキス類同様、紡錘形の細長い体形をしており、断面は円形に近く、尾の近くは側扁している。シロギスに比べると体高があり、太い。また、頭も大きめである。口は小さい。体色は褐色で、腹側は白色。棲息するエリアの砂地と同化するような色合いだ。そして、体側には2列の暗色斑が並ぶのが特徴。
背ビレは褐色、腹ビレと尻ビレは半透明から白色。背ビレは2基で、第2背ビレには3列の暗色斑が並ぶ。また、胸ビレ基部に黒色斑が見られるが、斑の色味が薄い個体もいる。
弱ったり死ぬと、体側にいくつもの暗色の斑点が現れるのが一番の特徴。種子島などではシロギスとホシギスの両方が釣れるが、この点で簡単に見分けることができる。ただし、大型のホシギスになると、斑点はあまり目立たなくなってくる。また、モトギスは本種よりやや青みがかった体色をしており、背ビレに黒い斑点がある。最大で全長40㎝程度まで成長するが、近年では30㎝を超えるような大物は、以前ほど釣れなくなっているという。
シロギスと非常によく似ているが、シロギスより体高ガあり、体側に暗色斑がある
【生態】
沿岸部の砂底や砂泥底の浅場まで遊泳し、河口域へ侵入してくることもある。身の危険を感じると、砂に潜ることもある。主にイソメなどの多毛類、小さなエビなどの甲殻類を食べる動物食性。エサを捕食するときは、細長い唇を突き出して砂底に潜む獲物を吸い込むように食べる。
産卵期は、本土のシロギスが夏頃であるのに対し、ホシギスは低水温期の2~3月頃とされる。
【文化・歴史】
本土でシロギスが釣りや料理の対象として親しまれるのと同様、琉球列島でもキス類は親しまれている。
ホシギスという名は、死ぬと現れる斑が星のようであることから付いた名である。同様に英名では「blotchy sillago」というが、斑点のあるキスという意味だ。沖縄では、ウジュルと呼ばれる。
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