【分類・分布】
ナマズ目ゴンズイ科ゴンズイ属の海水魚。関東以南から沖縄にかけて分布しているが、主に太平洋側に棲息し、日本海側での棲息数は少ない。
近似種のミナミゴンズイは九州~沖縄諸島、インド洋、西太平洋に広く分布する。ゴンズイとは以前は同種とされていたが、2008年に別種に分類された。それによって、それまでのゴンズイの学名はミナミゴンズイの学名となり、ゴンズイにはPlotosus japonicusという新しい学名が付けられた。
沖縄諸島では両種が棲息しており、本種はサンゴ礁の礁縁部など、ミナミゴンズイは汽水域で見られる傾向がある。
【形態】
体型は細長く、頭部や胴体部分までは丸いが、尾にかけて側扁する。第二背ビレと尻ビレの基底が長く、尾ビレとつながっている。体色は茶褐色で、頭部から尾部にかけて目を挟んで左右に2本ずつの黄褐色の線がある。老成してくると、この線は徐々に薄くなってくる。
ナマズ目の仲間に共通するようにウロコはなく、体表はヌルヌルとした粘液で覆われている。また、口の周囲には長い口ヒゲが4対・計8本ある。
背ビレと胸ビレの第一棘条には毒棘(写真円内)があり、刺されると患部は激痛に襲われ、腫れ上がる。人によっては2回目以降にはアナフィラキシーショックに見舞われ、命の危険にさらされる場合もある。
本種の全長は15~25㎝だが、ミナミゴンズイは30㎝ほどまで成長する。
ゴンズイの棘に刺されると激痛に見舞われる。持ち帰る場合は切り落としてしまうのが無難
【生態】
夜行性で、成魚は昼間は浅場の岩礁域から砂泥底の物陰にいて、夜になると活発に活動して底棲生物や甲殻類、魚卵、イカ類などを捕食する。
集団で行動する習性があり、とくに幼魚は巨大な団子状に群れる。このように群れた状態を「ゴンズイ玉」と呼ぶ。これは、集団行動を引き起こすフェロモンによる働きだということが知られている。
産卵期は5~7月頃。成熟した雄と雌のペアが、海底に直径10㎝ほどの産卵床を作って産卵する。一度の産卵数は200~600粒ほどで、直径約3㎜ほどの黄色い球型の沈性卵となっている。雄が卵を保護し、孵化後も雄が仔魚を守る。
胸ビレの棘の基底部と肩帯の骨を擦り合わせて特有な音を出す習性があるが、これはゴンズイ科や仲間のハマギギ科、ギギ科などの魚種に共通するもの。
びっしりと群れて団子状になったところは「ゴンズイ玉」と呼ばれる
【文化・歴史】
ゴンズイという名は、漢字で「権瑞」と書くことが多いが、「牛頭魚」(ゴズイオ)とも書かれる。牛頭(ごず)とは、牛頭人身の地獄の鬼神のことで、ゴンズイは頭が牛に似ていて毒ビレをもつため、悪魚的な意味から付いた名だという。イオは、魚の古語である。
また、中部地方では屑のことをゴズ、ゴンズリといい、屑の魚=捨てるような魚、という意味からきているという説もある。地方名にも、「江戸を見ず=江戸には出せないような価値のない魚」という意味で、エドミズという名もある。そのほかにも地方名は非常に多く、ギギ、ウミギギ、ウミナマズ、ギギュウ、グジャコ、ゴンゼなどがある。
前述のように、ゴンズイは毒棘をもつため、釣り上げたら魚ばさみや大型のメゴチばさみなどでしっかりとつかみ、リリースする場合はハリスごとカットして逃がしてやるとよい。ハリは自然に外れる。棘の毒はゴンズイが死んでも失われないので、絶対に堤防の上などに放置しないこと。毒棘は厚い靴底を貫くほど鋭いので、とくに夜釣りでは放置されているものを踏みつけない注意が必要だ。
万が一、棘に刺されてしまった場合は、患部を水でよく洗い、毒を絞り出してから風呂程度の温度の湯に30分~1時間浸けると、毒が不活性化し痛みが治まる。腫れや痛みが激しい場合、あるいは全身に異常な症状を認めたときには、できるだけすみやかに医療機関を受診し、痛み止めや解毒の処方をしてもらうことが大切だ。
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