【分類・分布】
従来、フグ目ギマ科ギマ属に分類されており、ギマ科はベニカワムキ科とともに原始的なフグ目魚類とされていたが、最近の研究ではベニカワムキ科よりも、むしろモンガラカワハギ科やカワハギ科に近い仲間ではないかという説もある。
日本では千葉県以南に分布。そのほか、インド洋、西太平洋の温帯から熱帯域の沿岸部に棲息している。
【形態】
成魚の全長は20㎝前後で、最大では約30㎝程度にまで成長する。
上半身はカワハギなどと似た形をしており、側扁した体高のある体型をしている。背ビレの第一棘条は長く鋭く、腹ビレは1本の棘条のみで構成されていて、左右一対ある。背1本と腹2本で合わせて3本の棘があることから、Triplespines(=3本の棘)という英名が付いている。
一方、尾柄はやや縦扁し、尾ビレはカワハギ科の魚と違って中央部が湾入したイナダなどに似た形状をしている。
体色は銀色、または灰色で、背側はやや青灰色がかっている。胸ビレと尾ビレは黄色。小さな口には、頑丈な歯が2列ついており、外側は門歯状、内側は丸い歯になっている。
【生態】
比較的浅い砂泥底の内湾に、群れで棲息する。食性は雑食性で、甲殻類、貝類、ゴカイ類などを捕食する。
産卵期は6~7月頃で、分離浮生卵を産む。孵化した仔魚は、菱形の体に茶色の斑模様でカワハギの仔魚によく似ているが、次第に体色が銀色に変化し、尾柄部が伸びて成魚の体型に近づいてくる。仔魚は汽水域やアマモ場などで群れているが、次第に内湾の底層へ移る。
【文化・歴史】
木綿に麻のような硬い風合いをつける加工方法、または加工を施した布そのものを「擬麻(ぎま)」というが、本種の硬くザラザラとした魚皮がこの擬麻を思わせることからギマと呼ばれ、漢字でもその字を当てるようになったという。
また、体色が銀色をしていて、馬のような顔であることから「銀馬」=ギマと呼ばれるようになったという説もある。
なお、愛知県三河地方においては、「ギマ」は皮を剥いで食べる魚全般の呼称で、カワハギはホンギマ、ウマヅラハギはウマギマ、ギマはタチギマ、またはツノギマと呼ばれる。
そのほかの地方名としては、ハリハゲ(三重・尾鷲)、ツノハゲ(和歌山・串本)、ツノギ、ツノコ、ギッパ、ギッペ、ギンカワムキなどの呼び名がある。ツノがつくものは、背ビレと腹ビレの棘条からくるもので、ハゲやカワムキなどがつくものは、カワハギと同様、調理の際に皮を剥ぐ必要があること、一気に皮が剥げることからきた名だ。
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