【分類・分布】
カサゴ目のなかのフサカサゴ科に属し、メバル属に分類される日本固有種。近縁種には、北日本産のオオサガ、サンコウメヌケ、バラメヌケなどがおり、本種とともにメヌケ類と呼ばれる。
分布域は太平洋側では関東から四国まで、日本海側では新潟県から山口県までで、とくに相模湾や駿河湾に多い。
【形態】
漢字で「赤魚鯛」と書くように、地域によって多少異なるものの、ほとんどの個体は鮮やかな朱色をしており、やや不鮮明な斑紋黒班をもつ。若魚では、体側に5条の暗色班がある。
体型は長卵形で側扁し、尾ビレの後縁はほぼ直線か、やや内側に切れ込んでいる。頭は大きく、下アゴは上アゴよりも前方に突き出し、その先端下面にこぶ状の突起がひとつある。歯は比較的軟弱。背ビレ棘は13本で、頭部背面の棘はよく発達している。眼は大きく、眼窩(がんか)の下縁の前方と後方に、それぞれ1本の鋭い小さな棘がある。腹膜とエラブタの内面は黒い。
釣り上げたときに水圧の急激な変化により眼が飛び出してしまう様子から「メヌケ(眼抜け)」とも称される。ただし、メヌケとはアコウダイのみを指す名称ではなく、同属のうち体が赤く大型になるものの総称。
アコウダイ以外にオオサガ(ベニアコウ)、サンコウメヌケ、バラメヌケ、アラスカメヌケ、ホウズキなども含まれる。いずれもよく似ているため混同されるが、本種には眼窩下に棘があること、また、頭の背面に3条の暗色帯がないことで見分けることができる。
なかでも、ホウズキは本種に酷似しているため、区別が非常に困難。両種を見分けるには、まず尾ビレを見るとよい。ホウズキの尾ビレは、後方にわずかに膨らんでいるのに対し、アコウダイは内側に切れ込んでいる。
釣りあげられて表層まで浮上すると、水圧の旧劇な変化によって、眼が飛び出す。水中ではこのような眼をしているわけではない
【生態】
水深200~1,000mくらいの深海に棲息。岩礁域のカケアガリや砂礫帯で群れを作って射る。甲殻類やイカ、小型魚類などを捕食している。成魚は最大で体長80㎝、体重8㎏あまりに成長するが、釣りの対象になる平均サイズは2~4㎏。
繁殖期は12~4月。卵胎性である本種は繁殖期になると交尾を行い、卵はメス親の体内で受精・孵化する。メス親は水深200~300mほどの場所に上がってきて仔魚を産出する。
【文化・歴史】
アコウダイやホウズキは、深海釣りの対象魚のなかでもとくに人気がある。枝バリにずらりとハリ掛かりして水面に浮上してくる、いわゆる「アコウの提灯行列」「アコウの華」は、深海釣りのファンにとってたまらない光景だ。
水深400mを超える深海の釣りが定着したのは、昭和50年代になってからのこと。昭和30年代には伸びの少ないポリエステル製の釣りイトが普及し、深海漁場は急速に開拓されたが、この時代は漁師のみが狙う領域。その後、釣り具の開発が進み、大型電動リールが登場するに及んで、深海釣りは一般の釣り人にも手が届く存在となった。それ以降、アコウダイは、キンメダイとともに抜群の食味で深海釣りのファンを増やしてきたのだ。
なお、本種は「アコウ」と呼ばれることも多いが、関西地方ではキジハタのことをアコウと称するので注意が必要である。
↓こちらもあわせてどうぞ