【分類・分布】
一般にイワシといえば、ニシン目ニシン科マイワシ属のマイワシを指すことが多く、ウルメイワシはウルメ、カタクチイワシはセグロなどと呼んで区別することが多い。また、サビキ釣りなどでイワシ同様に釣れるトウゴロウイワシは、イワシの名は付いているが実際にはボラに近い。姿形はイワシに似ているがウロコが硬く、イワシの仲間のようにはがれ落ちることはない。
マイワシは、オホーツク海から日本各地、東シナ海、南シナ海までの東アジアの沿岸域に広く分布している。
【形態】
背面部は暗青色、腹部は光沢のある銀白色。腹ビレが背ビレの真下に位置し、体側には黒い小斑点が縦1列、または2列に並んでいる。東北から関東にかけての別称「ナナツボシ」は、この斑点を指して呼ばれるものだ。基本的に、ほかのイワシ類とはこの斑点で見分けられるが、なかには斑点がまったくない個体もいる。
体形は細長く、腹部が側扁しており、断面は逆三角形に近い。下アゴが上アゴよりわずかに突き出ている。ウロコは薄い円鱗で、非常にはがれやすい。成魚の体長は30㎝に達するものもいるが、20㎝程度までの個体が多い。生後1~2年で10~20㎝に成長し、寿命は5~8年程度とされている。
10㎝前後のものをコバ(小羽)、15㎝前後をチュウバ(中羽)、20㎝以上をオオバ(大羽)と呼び名が変わる出世魚でもある。
堤防で釣れた中羽サイズのマイワシ
【生態】
通常は、水深20~70mの上・中層を大群で回遊している。外洋に面した沿岸域を回遊することが多いが、潮通しがよければ内湾まで入ることもある。天敵は大型の回遊魚や海鳥などで、襲われた際には一斉に同調して泳ぎ、敵の攻撃をかわす。
春〜夏にかけては北上、秋〜冬には南下という季節的な大規模回遊を行うが、こうした回遊をせずに一定海域に留まっている群れもある。
産卵の時期は地域によって異なるが、南ほど早く12月〜7月頃まで。産卵は夕方から深夜、水深数十mの海中で行われ、4万〜12万粒という多数の卵を産む。しかし、大多数の卵がほかの動物に捕食され、成魚まで成長できるのはひと握りだ。受精卵は分離浮性卵で、海中を漂い2~3日で孵化する。稚魚のうちは橈脚類の幼生や卵をエサとしているが、成魚になると各種のプランクトンを捕食する。口とエラブタを大きく開けながら泳ぎ、鰓耙でプランクトンを漉し取って捕食するのが特徴だ。
【文化・歴史】
紫式部が、高貴な人々が食べるものではない、とされながらも大のイワシ好きだったという逸話があるほど、昔から日本人の食卓を賑わしてきた魚だ。
日本の沿岸でのマイワシの漁獲高は,60~80年周期で減少と増加の波を示し、1965年には1万トンを割ったが、その後回復して1988年には450万トンとなった。しかし、その後はまた減少を続け、2008年の漁獲高は10万トンを割っている。
現在ではあまりみられなくなったが、節分の時期にはイワシの頭をヒイラギの小枝に刺して玄関に飾っておくと、鬼除けになるという風習が各地にある。
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