【分類・分布】
コイ目コイ科タナゴ属に分類されるタナゴの一種で、同じ属にはカネヒラ、タナゴ、オオタナゴ、アカヒレタビラ、シロヒレタビラ、イタセンパラなどがいる。
日本固有のタナゴで、太平洋側では神奈川県以北、日本海側では新潟県以北で青森県以外の本州が本来の分布域だが、現在多くの都県で棲息が確認されていない(後述)。
霞ヶ浦からの二枚貝の移植に伴い、諏訪湖、琵琶湖などでも棲息が確認された記録がある。
【形態】
体形は丸みを帯びた菱形で、タナゴ類のなかでもっとも細かいウロコをもつ。ウロコの縁が黒く、体色は暗い銀色に見える。背ビレと尻ビレが大きく伸張し、ヒゲはもたない。
婚姻色は棲息地によっても異なるが、オスはエラから腹の部分が赤くなり、吻部に追い星が現れる。
体長は6〜9cm程度。ウロコの縁が黒く、細かいのが特徴
【生態】
平野部の小河川、水路、ため池、湖沼などに棲息。浮水植物が繁茂する止水環境を好む。食性は植物質に偏った雑食性で、付着藻類、水草の葉などを好んで食べる。
タナゴ類は春に産卵するものが多いが、ゼニタナゴの産卵期は9〜11月頃。イシガイやドブガイなどの二枚貝に100粒程度の卵を産み付けることを数度繰り返す。仔魚は貝の体内で越冬して、翌春水中に泳ぎ出る。寿命は2年ほど。
【文化・歴史】
以前は千葉県の手賀沼や茨城県の霞ヶ浦などに多数棲息していた普通のタナゴだったが、高度成長期以降、棲息数が激減、さらに外来魚による食害も加わり、現在では絶滅の危機に瀕している。
また、同じタナゴ類のカネヒラとの競合の影響も見逃せない。カネヒラは元々琵琶湖水系以西に分布していたが、現在では関東や東北にも棲息域を広げている。産卵期や産卵場所が重なるため、魚体の大きさなどがらカネヒラに産卵場所を奪われた結果、減少につながった、とされる説もある。
現在、環境省レッドデータブックでは絶滅寸前のカテゴリーである「絶滅危惧ⅠA類」。都道府県別のレッドリストでも、新潟、群馬、埼玉、東京、神奈川、千葉では絶滅したとされている。
一方で観賞魚として販売されていることもあり、業者による乱獲も危惧されている。安易な飼育や売買はしないようこころがけたい。
地方名はヤスリメ、オカメ、オタフク、カシマタナゴなど。
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