【分類・分布】
コイ目コイ科ウグイ属に分類される。沖縄以外のほぼ全国に分布するウグイは近縁種で、同じ属には、北海道や東北に棲息するエゾウグイ、東北地方の日本海側から新潟に棲息する受けクチウグイも分類されている。
マルタは太平洋側では関東地方以北、日本海側では富山湾以北に分類し、海外ではサハリン、アムール川流域、ピョートル大帝湾(ウラジオストク周辺)から朝鮮半島の東岸に分布している。比較的冷水系の魚。
【形態】
ウグイとよく似た細長い体型をしていて、婚姻色以外の判別はしにくい。体色は背部は茶褐色、腹側は銀白色。吻部は丸みがある。
ウグイとの相違点は、婚姻色の体側の赤い縦条が、ウグイは3本あるのに対して、マルタは1本のみ。上アゴから胸ビレ基底部を経て、体側の腹寄りを尾柄まで走っている。肩の部分には赤い三日月型の斑点ができ、背ビレの基底部も赤くなり、体側が黒ずんでくる。ウグイより小さな追い星が、ほぼ全身に現れる。
春から初夏頃の婚姻色の出たマルタ。マルタの赤い線は1本で、3本現れるウグイと区別できる
【生態】
マルタは遡河回遊魚で、主に内湾に棲息し、産卵期になると河川に遡上する。すべてが降海型で河川に残留するものはいないとされる。
産卵は春〜夏頃で、河川の中流域まで遡り、砂礫底の流れが速い場所を好んで産卵する。粘着性が強い卵で石に付着し、3日ほどで孵化して川を下り、河口などの汽水域で1年ほど過ごす。体長が7〜9cmほどになり、耐塩性が出て来ると海に降りて沿岸部で成熟するまで数年過ごす。寿命は10年ほどで、最大70cm、3kg程度まで成長する。ウグイは最大でも30cmほどなので、大型のものはマルタと判別がつく。
食性は動物食で、稚魚の頃は浮遊動物、流下動物など、成魚になると、ゴカイ類、貝類、小型甲殻類などを食べる。
【文化・歴史】
関東でマルタの釣れる川として知られる多摩川では、かつては端午の節句にマルタを食べたり、子の初節句のお返しに親戚などにマルタを贈る風習があったという。しかし高度成長期の多摩川の水質の悪化に伴い、マルタも激減。近年になって水質の回復や漁協による産卵床の整備などによって、再び魚影が回復してきている。(参考→多摩川沿いの東京都狛江市役所のサイト)
マルタは、マルタウグイと呼ばれることも多く、その他の地方名としては、ウシマルタ、オオガイ、ザッコ、アカウオ、ユゴイ、セグロなどがある。ウグイをマルタと呼ぶこともあり、ウグイと混称している名もある。
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