【分類・分布】
「カワマス」と称されるが、鱒類というよりは、アメマス、オショロコマ、レイクトラウトなどとともにイワナの一種で、サケ目サケ科イワナ属に分類されている。
北米原産で、アメリカでは数州がから移入された外来種だが、水質の汚染や高水温などに弱いことから、定着・繁殖している河川は少ない。日光の湯川、長野県の明神池・梓川、北海道の摩周湖周辺の河川など、一部の地域で自然繁殖が確認されている。
【形態】
体型はイワナによく似ていて、体色は緑がかった茶色。体側には虫食い状も模様が広がり、模様は背ビレや尾ビレにも見られる。成熟したオスは、下アゴの先端が上に曲がり、体高が高くなる。腹と下側のヒレは色が赤味を帯びていて、下側の各ヒレは前部が白い。全長は北米では最大で80cm以上になるというが、日本の河川、または管理釣り場で釣れるものは、大きくても30〜40cmほど。
背ビレや尾ビレまで虫食い状の模様があり、下部が赤味を帯びているのが特徴
【生態】
ブルック(brook=小川)という名のとおり、激流よりも比較的穏やかな流れの河川に棲息する。基本敵に水温10〜15℃程度の上流の冷水域を好む。
イワナ同様警戒心が強く、日中は障害物の陰に潜んでいることが多いが、曇天時やまづめどきには積極的にエサを追う。エサは動物性のものならたいてい口にする大食漢で、水棲昆虫、甲殻類、小魚、帰るなどの両生類、時にはネズミなど小型ほ乳類も捕食する。
産卵期は11〜12月頃で、湖ではわき水のある岸辺、川の流れの緩やかな砂礫底などに卵を産み、40〜50日で孵化する。海外では降海型もいるが、日本では陸封型のみ。
【文化・歴史】
ブルックトラウトの日本への移入は、1902年(明治35年)、スコットランド商人のグラバー氏や英国大使館のバーレット氏らの手による。アメリカより発眼卵を輸入し、日光養魚場を経て、日光の湯川に移植されたものが、現在も自然繁殖している。各地に放流が行われたが、現在も定着しているのは上記の一部地域のみ。しかしブルックトラウトもまた、在来種の生態系に影響を与えるとして、他の外来魚と同様に「外来生物法(特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律)」により「生態系被害防止外来種(以前は要注意外来生物という名称だった)」に指定されている。
また、養殖されたものは、各地の管理釣り場などで釣ることができる。また、交雑しやすいことから、イワナと交雑した「ジャガートラウト」、ブラウントラウトと交雑した「タイガートラウト」などが人工的に育成され、管理釣り場などで放流されている。
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