【分類・分布】
タナゴの仲間は、コイ目コイ科の主にタナゴ属(タナゴ、カネヒラ、イタセンパラ、アカヒレタビラ、ゼニタナゴ、オオタナゴなど)、バラタナゴ属(ニッポンバラタナゴ、タイリクバラタナゴなど)、アブラボテ属(アブラボテ、ミヤコタナゴなど)に分類される。ヤリタナゴはこのうちアブラボテ属に分類されている。
北海道と南九州・沖縄を除く各地に棲息しており、日本のタナゴ類としては、もっとも広域で見られる。また、朝鮮半島の一部にも棲息している。
【形態】
タナゴ類のなかでは体長が6〜13cmほどある大型種。体型は側扁していて、タナゴ類としては体高が低く、同じ属のアブラボテに比べても、より細長い体型をしている。口角には一対のヒゲがあり、長さは目の直径より長い。アブラボテも同様で、アブラボテ属のタナゴ類の共通の特徴になっている。
体色は銀白色で、体側の暗緑色の縦条は不鮮明。背ビレの条間には、アブラボテ属の特徴である紡錘形の暗色斑がある。婚姻色が出ていない時は、アブラボテやカネヒラ、タナゴ、アカヒレタビラなどと判別しにくいが、体高の低さ、ヒゲの長さ、背ビレの基底長(短い)などで見分けられる。
婚姻色は、オスは胸ビレとエラブタの端、背ビレの前縁、尻ビレの下縁が赤くなる。尾ビレの中央後端が赤くなるものもいる。メスは短い産卵管が現れるが、タナゴ類のなかでは短め。
婚姻色の出たヤリタナゴ。ヒレの端と胸部分が赤く染まっている
【生態】
河川の中下流域、用水路の緩流域、溜池、沼などに棲息する。流れが緩やかで水草が豊富なところを好む。
食性は雑食で、水棲昆虫、甲殻類、藻類、プランクトンなどを捕食する。
産卵期は春から晩夏で、ほかのタナゴ類同様、マツカサガイなど二枚貝の体内に産卵する習性をもつ。オスが貝の近くにメスを誘導し、メスは貝の出水管に産卵管を差し入れて数十粒の卵を産む。その直後にオスが貝の入水管の近くで放精することで、貝が精子を体内に取り込む。孵化後、仔魚は1ヶ月ほど貝の中で過ごし、体長10mmほどになって貝の中から泳ぎ出る。寿命は2〜3年。
【文化・歴史】
分布している地域は広いが、棲息環境の悪化などで数は徐々に減少している。外来種であるオオタナゴ、大型種であるカネヒラなどが勢力を広げることで、ヤリタナゴをはじめとする在来のタナゴが数を減らしているところも多い。
環境省レッドリストでは、準絶滅危惧種(NT)とされ、都道府県別のレッドリストでは、絶滅危惧Ⅰ〜Ⅱ類とされているところも多い。
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