【分類・分布】
ヌマチチブは、スズキ目ハゼ科チチブ属に分類される淡水魚。ハゼ科の魚は、世界で2,000種以上がおり、淡水・汽水・沿岸部の海などに棲息している。
チチブ属のほかに、マハゼ属(マハゼ、ハゼクチなど)、ヨシノボリ属(ヨシノボリ類)、ウキゴリ属(ウキゴリ、ジュズカケハゼなど)、ムツゴロウ属(ムツゴロウなど)などがハゼ科に分類されている。
分布域は、北海道から九州まで広く棲息している。
【形態】
全長15cmほどで、マハゼと比べると太く短い円筒形で、頭は横に平べったく、尾側は側扁している。口は大きく、腹ビレが左右くっついて吸盤状になっているのが特徴。この吸盤では、流れが強い場所でも川底の石などにくっついていることができる。
体色は明褐色から黒で、生息環境によっても異なる。身体全体に白い斑点が散在している。胸ビレの付け根は黄土色の帯の中にオレンジ色の帯がある。尾ビレは丸く中央に切れ込みはない。
釣れるのは河川内が多いが、海に下って成長し、再び河川に遡上する「両側回遊魚」
【生態】
河川の汽水域から下〜上流、汽水湖、故障などに棲息する。隠れ家になる隙間を好み、川石や障害物、杭などの陰に潜んでいる。
食性は雑食で、藻類、水棲昆虫、小魚などを食べる。
産卵期は春から夏で、オスが産卵室を作ってメスを誘い、産卵後もオスが卵を保護する。10日間ほどで孵化すると仔魚は海へ下って1〜3ヶ月を過ごした後、再び河川へ遡上する。寿命は約1年間で、産卵を終えると死んでしまう。
【文化・歴史】
四国の四万十川、仁淀川などには、川を遡上するヌマチチブなどの小魚をとるための「ガラ曳き」「ゴリガラ曳き」と呼ばれる伝統釣法がある。(四万十市の観光情報ページ→■ ) 以前は多くの漁師が行っていたが、現在ではこれを行う漁師は非常に少なくなっている。
各地の身近な川に棲息するため、地方名は非常に多く、主なものでもクロゴリ(秋田県)、クロゴロ(茨城県)、ダボハゼ(関東・東海地方)、グズ(新潟県・北陸地方)、イモゴリ(石川県)、カワハゼ(和歌山県)、フグリクライ(京都府)、カジカ・ドンコ(愛媛県)、ゴモ(鹿児島県)などさまざまだ。
ゴリという呼び方は、ハゼ型の淡水魚全般の呼称とされることもあり、カジカとの混称も多くみられる。カジカは川底に棲息し、頭が大きくずんぐりとした体型が似ているが、分類上はまったく別の魚。
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