【分類・分布】
ベニザケの陸封型がヒメマスで、分類上はサケ目サケ科タイヘイヨウサケ属に分類される。国内での自然分布は、北海道の阿寒湖とチミケップ湖だけだが、移植によって北海道では支笏湖、倶多楽湖、洞爺湖など、青森県では十和田湖や蔦沼、関東近辺では尾瀬沼、菅沼、湯ノ湖、中禅寺湖、富士五湖の西湖、本栖湖、長野県の青木湖などにも棲息している。
いずれも水深が深く、透明度の高い湖で、夏に表層水温が上がっても、ヒメマスの棲息に適した水温10℃前後の層がある。蔦沼や湯ノ湖などは浅いが、冷たい湧水によって低い水温が保たれている。
【形態】
成魚は、頭部と背が青緑色、体側は銀色、腹は銀白色で、背や尾ビレに小さな黒斑がある場合もある。成熟するとオスは体高が高くなって、吻が曲がってくる。また、ベニザケほど鮮やかではないものの、体側が紅色に変化する。メスは体色の変化はオスと同様だが、そのほかの部分に変化はない。体長は50cm前後だが、70cmにまで成長するものもいる。
【生態】
ベニザケは途中に湖のある河川で産卵し、途中の湖で1年から数年を過ごして海に下り、さらに成熟のために海で数年を過ごし、また産卵のために川を遡る。そのなかで海に下りずに湖で成熟するのがヒメマスとなる。
エサは動物性プランクトンなど。晩春から初夏にかけては、水面に落果する水棲昆虫も補食する。産卵期は9月上旬〜10月上旬。流入河川や湖岸沿いの礫底で、底に浅い窪みを作って産卵し、オスが放精する。稚魚は1年で10cmほどに成長し、2年目には銀毛化してくる。
【文化・歴史】
北海道でのヒメマスの地方名「チップ」は、アイヌ語で薄い小魚を意味する「カバルチェップ」「カバチェップ」が語源とされる。
18世紀には阿寒湖でヒメマスの棲息が知られ、1890年代には支笏湖への移植がされされ、さらに1902年には十和田湖、1909年には中禅寺湖へと移植が進んだ。
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