【分類・分布】
ビワマスはサケ科サケ属に分類される魚で、サケ属のなかでも形質や生態、遺伝的に近いサクラマス(ヤマメの降海型)、サツキマス(アマゴの降海型)、ビワマスは「サクラマス群」と呼ばれ、ビワマスもやサクラマス同様、ヤマメの亜種となる。
ビワマスは、滋賀県の琵琶湖のみに自然分布する魚で、琵琶湖においては重要な水産資源。中禅寺湖や芦ノ湖などにも移植されたこともある。
【形態】
サクラマスにも似た銀白色の体色で、サクラマスより目が大きく、顔つきが優しい印象がある。ヤマメなどと同様、ビワマスの稚魚は体側に朱点(パーマーク)があることが多いが、体長20cm以上になると消失する。成魚の全長は40〜50cmほどだが、時には70cmを超えるものもいる。
産卵期になると、オスメスともに赤や緑の雲状紋が婚姻色として現れる。オスのほうが婚姻色が強く、またサケ類によく見られる吻部が内側へ曲がる「鼻曲がり」が見られる。
体型や体色はサクラマスによく似ているが、サクラマスに比べ、目が大きく、口先が丸い。
【生態】
親魚は9月下旬から11月にかけて琵琶湖の流入河川に遡上して産卵を行う。孵化した稚魚は小型の昆虫などを食べながら流れの緩やかな場所で生活し、体長が7cm前後になると川を下るようになる。サクラマスやサツキマスは降海して成長するが、ビワマスは琵琶湖に降湖(こうこ)する。
以降水深30〜90mの低水温域へ移動。1年で20cm以降年10cmのペースで成長し、4年で40〜50cmほどになる。
主なエサはヨコエビ、コアユ、イサザなど。
【文化・歴史】
古くから「アメノウヲ」「アメノイオ」「アメノウオ」などと呼ばれ、これは婚姻色が出たビワマスが、雨の日に群れで産卵のために河川を遡上することからついた名前。
琵琶湖では水産資源として重要で、増殖のために人工孵化した稚魚を放流したり、全長30cm以下のビワマスの採捕禁止のほか、遊漁や漁業の決まりを設けているので注意したい。
ふなずしの原料になるニゴロブナ、ホンモロコ、ゴリ(ヨシノボリ)、コアユ(琵琶湖陸封の小型のアユ)、ハスなどと並び、琵琶湖の特徴的な魚貝類を県立安土城江湖博物館が選定した「琵琶湖ハ珍」のひとつとされている。
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