【分類・分布】
サケ目アユ科アユ属の魚(キュウリウオ科とされることもある)。日本での北限は天塩川とされるが、実際釣りが可能なのは、北海道南部地域以南。本州以南の全国各地に分布している。海外では朝鮮半島、台湾、中国の一部にも分布している。
琵琶湖に棲息しているコアユは、ほかのエリアのアユとは遺伝子が異なるが、正式な亜種としては分類されていない。
亜種であるリュウキュウアユは、沖縄本島では絶滅したが(但し一部地域で、奄美大島産稚魚が放流されている)、奄美大島には棲息している(環境省レッドリストの絶滅危惧ⅠA類)
【形態】
平均的な成魚の体長は、18〜23cmほどだが、時には30cmを超え、釣り人には「尺鮎」と呼ばれる憧れのターゲットとなる。
流線型の美しい魚体で、成魚はエラブタの後ろに楕円の黄色い斑紋がある。自分の縄張りをもつことによってより鮮やかになることから、「追い星」と呼ばれる。
各鰭は比較的大きく、背ビレの後方には脂ビレをもつ。成熟したオスとメスでは、尻ビレの形が異なり、オスは細長く角張り、メスは三角形に近く、後ろのほうに窪みがある。歯は硬く櫛のような形状で、主食であるコケを効率よく捕食できる。
エラブタ後方の黄色い楕円形の斑紋が「追い星」
【生態】
アユは「年魚」とも呼ばれ、寿命は基本的に1年。
秋に成魚が河川下流域の砂礫底で産卵を行い、20日間前後で孵化した後、川を下って海で越冬する。翌春、体長6〜7cm程度に成長して、再び川を遡る。
仔魚の頃は主に水棲昆虫などを捕食しているが、成長するに従い、川底の石に付着した珪藻、藍藻といったコケを食べるようになる。この食性のため、アユはスイカのような香りをもつ。「香魚」とも呼ばれる所以だ。
コケが付着する石の1m内外を縄張りにし、そこに侵入してくるほかのアユを体当たりして追い払う。その反面警戒心が強く、川面に人間や竿の陰が落ちると逃げる一面ももつ。
【文化・歴史】
日本の建国神話にも登場したり、鵜飼いなどの伝統漁法があるなど、古くから日本人に愛された魚。
現在も淡水の釣りのターゲットとしては、トップクラスの人気。ただし、アユが天然遡上する河川は少なくなっており、漁協による放流によって遊漁が成立している河川も少なくない。
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